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「女性たちが見ている 10年後の消費社会」 「誰かのために」買うことの推進力

 「女性ならではの視点でご意見を」。会議でふいに聞かれて、返答に困ったことがある。男性と比べて、女性の視点は何が違うのか? それも消費者として。そんな疑問を持ち続けた女性たちの“自己理解”に役立ちそうな1冊だ。

 多くの家庭において、消費の決定権は女性が握ると言われている。自分のためのモノだけでなく、夫や子どもなど「自分を取り巻く人たち」のモノの「代理購買消費」を担う女性たちは、幅広い業界の顧客となり、経済の推進力になり得る。さらに、買い物の成果について周囲に発信し、消費を横へ広げていく。

 その潜在能力に30年以上前に着目し、「女性視点マーケティング」を専門としてきた著者は、女性が創出する消費を「生活向上消費」「おせっかい消費」など七つに分類。その行動を生む価値観として、「つながり」「縁」「共」などを挙げ、それぞれを細かく要素分解して解説する。

 生理・出産・更年期など、女性特有の「ブルー消費」に鉱脈あり。著者の提言によって、それらの課題に長年応えてこなかった社会の冷たさに気づかされる。誰かのために消費してきた女性自身の困りごとに、ビジネスチャンスが潜んでいる。=朝日新聞2021年3月20日掲載