お客様の苦情、クレーム対応を主な業務とする百貨店の部署、それが「お客様相談室」です。その仕事ぶりを描く漫画『銀座からまる百貨店お客様相談室』(漫画・鈴木マサカズ、原案協力・関根眞一、講談社)にも、様々な不満の声が日々届きます。
理不尽で不合理なつわものばかりのお客様に対応するのは、クレームの窓口であり、百貨店の不人気部署である「お客様相談室」に所属するメンバーたち。難しい苦情であればあるほど面白がる室長の銀崎を筆頭に、ぶっとんだクレームほど興奮する框、売り場から相談室に異動してきた水科。個性的なメンバーの中で、理不尽なクレームと同僚たちについていけず、うんざりしている木洩田一郎を中心にストーリーが進んでいきます。
緊張すると本音がポロリと出てしまうのが、木洩田の悪いクセ。「おつりが2円足りなかった」と激怒したお客様の家にお詫びに行った際にも、「帰りたい」と言葉が漏れてしまい、殺されかけるというへたれっぷり。そんな木洩田ですが、予想もしないクレームを仲間とともに解決し、仕事のやりがいを見つけていきます。
クレームは少々困ったレベルから、「購入したワイシャツが一度の洗濯で縮んでしまった」などという「まっとうなもの」、時には百貨店に落ち度のない、驚くようなものまで実に様々です。
たとえば「購入したブラウスの編み目が一度洗濯しただけでよれてしまった」というクレームに、売り場のスタッフが「言いがかりだ」と言ってしまったことが、SNSにアップされ最悪の事態を招いてしまったという案件。実は「2年前に買った毛皮のコートが虫食いされたから弁償しろ」という理不尽なクレームを突きつけていた人物でした。1秒でも早く、この緊急事態を鎮静化させるのが木洩田らのミッションです。
お客様相談室の戦略には実は、「攻め」と「守り」があるといいます。お客様に満足してもらう対応を「守り」、関連部署に伝達することが「攻め」の対応にあたるのだそう。「守り」に重要なのは、お客様からの指摘に対して誠心誠意お詫びをしたうえで調査を行い、その結果や再発防止策を回答することです。謝罪と新しいブラウスを受け取ってもらうため、木洩田と水科はお客様のもとへ。すでに販売済のもの、店頭にある在庫に対して同じような苦情がなかったかについても調べます。
一方、攻めの対応においては、お客様の声を社内へしっかり伝達することで、お客様の期待に応えるアクションが具現化するのだとか。逆に他部署との連携がうまくいかずクレームが大きくなってしまう事もあるので、社内での情報共有も大切な業務の一つです。
クレームには、客本人にしかわからない思いが隠れていることもあり、そんな言葉に耳を傾け、思いを吐き出させるのが大事だと銀崎はいいます。その不安や悩みを一番近くで感じ、冷静かつ迅速に解決、安心してもらうプロがお客様相談室です。「またのご来店をお待ち申し上げております」という言葉をかけ、品物と一緒に笑顔も持って帰ってほしい。そしてまた来店してもらいたいという願いをこめて、今日も彼らはお客様に真摯に向き合っています。
「銀座からまる百貨店お客様相談室」で知る、クレームあるある!?
- お客様相談室出動要請の館内放送がある。本書では「1階化粧品売り場でお買い上げいただきました粕田様」などの隠語を使い、厄介なお客様が来ていることを伝達する
- トイレに忘れ物をして、明らかに自分のせいなのに「置き引きされた」などのクレームを寄せてくる人もいる
- お客様からのクレームから、新しい商品やメニューができることが時々ある
- クレーマーには常連がいて、お客様相談室のなかでもいつも同じ人を指名する