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「百人一首 うたものがたり」など注目の新書5選(朝日新聞2021年4月17日掲載)

「百人一首 うたものがたり」

 現代の歌人が百人一首の面白さを一首ずつ解説する。「君がため惜しからざりし命さへ……」では、作者・藤原義孝の早世を予告していたかのような「言霊」の存在を指摘。一度は耳にしたことがある名歌の裏に隠された意外な逸話や人間ドラマの数々に心を奪われる。
★水原紫苑(しおん)著 講談社現代新書・990円

「毒親の日本史」

 子どもの人生を奪い、ダメにする「毒親」という概念が定着する現代よりはるか昔。子どもの恋文を世間にさらす藤原道綱母、父や継母にいびられ続けた小林一茶など、日本史上にも親子間の愛憎は数多くあった。ときに歴史を変えた大争乱の原因にも。親子間の視点から日本史を読み解く。
★大塚ひかり著 新潮新書・924円

「京大式 へんな生き物の授業」

 「ノープラン最高! ムダ万歳!」と帯でうたう微生物の生存戦略を、京大准教授が説く。他者から栄養を奪うもの、自らの細胞からミサイルを発射するもの、謎だらけの生き物「ハテナ」と実に多様。目に見えぬ生き物たちのサバイバル術はコロナ禍ではいっそう胸に響く。
★神川龍馬著 朝日新書・869円

「野球の科学」

 スポーツ選手を動作解析する研究者が解剖学や力学、統計学を使い、野球の投・打・戦術を分析する。例えば送りバントの得点確率は、プロ野球だと減少するが高校野球では向上することが数字で示され、面白い。コーチングを学びたい指導者を意識して書いたという。
★川村卓著 SBビジュアル新書・1100円

「戦後政治史 第四版」

 日本政治を「論じる」のではなく、「コンパクトに記述する」通史。政治記者・石川氏の逝去後は政治学者・山口氏が書き継いでいる。今回は、民主党政権下の東日本大震災から、安倍政権の長期化、コロナ危機までの10年を増補した。衆参両院の全選挙結果も収められている。
★石川真澄、山口二郎著 岩波新書・1144円=朝日新聞2021年4月17日掲載