先日、Ｚｏｏｍ（オンライン会議サービス）デビューしました。今更ながら、遅ればせながら、といった感じです。昨年、このサービスが広く利用されるようになった頃、そろそろ私も準備しておいた方がいいかなと、機会が訪れるのを若干の不安とともに待っていたのに、新刊インタビューも、出版社との打ち合わせも、すべて電話で事足りて、そのうち従来の対面方式に戻っていたのですが……。
この５月末にある新人賞選考会がＺｏｏｍで行われることになったのです。昨年は選考委員が個々に採点した書面を出版社に提出し、受賞作が決定しました。結果に不満はないものの、これでよかったのか？ という思いも残りました。対面の選考会では、委員同士が話し合う中、自分が気付けなかった、作品の長所や短所が見えてきて、最終的に大逆転が起きることもあります。
今年は東京で、と決まっていたので期待していたところ、３月末、オンラインに変更したい、と出版社から連絡がありました。緊急事態宣言が解除されたばかりなのに、慎重すぎるのでは？ と、やや納得できない気持ちで了承したものの、現状況です。たった２か月先を見通せなかった自分にあきれながら、Ｚｏｏｍアプリをダウンロードし、選考会予行日を迎えました。
なんと！ 全員の顔が見え、声が聞こえ、会話も想像以上にスムーズにできます。おまけに、選考委員である他の作家の方々の部屋もちらりと見られる特典つき。私の背後にもピカチュウやＪＯＪＯが映り込んでいます。担当編集者とは趣味がよく合うのですが、リビングのカーテンが色違いのおそろいだということも発覚し、なんだか嬉（うれ）しい気分に。
こんなに簡単で楽しいものだったのかと、別件の打ち合わせもＺｏｏｍでお願いすると、冒頭、ネコのミルまで見てもらえ、その後の会話も弾みます。選考会本番はまだこれからですが、何か化学反応が起きないかと、楽しみにしているのです。＝朝日新聞2021年5月19日掲載
