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【動画】能力主義は正義なのか? マイケル・サンデル教授らが「自己責任」を議論

(左上から)ハーバード大学教授のマイケル・サンデル教授、東京工業大学の伊藤亜紗教授、中島岳志教授、早川書房の一ノ瀬翔太さん

 対談は、公益財団法人早川清文学振興財団が企画。東工大科学技術創世研究院で未来の人類研究センター長を務める美学者の伊藤亜紗教授と、同センター「利他プロジェクト」リーダーでもある政治学者の中島岳志教授が、サンデル教授とオンラインで議論を交わしました。

「能力主義社会が不公平感」

ハーバード大学のマイケル・サンデル教授

 サンデル教授はまず「ここ数十年、能力主義に根ざした社会が明らかに不平等や不公平感を生んでいます。勝ち組と負け組の格差が深まり、分断が広がっています。成功して頂点に立った人たちはそれが自分自身の努力の結果と考え、苦しんでいる人や取り残された人のことを、自業自得だと考えるようにもなった。勝者が成功を自ら勝ち取ったものと思い込むのは間違いです。家族、共同体や国家、生きている時代の恩恵を忘れてはいけないのです」と指摘します。

 アメリカや日本など、世界各国で進む政治への怒りと分断の背景に、勝ち組と負け組の格差拡大があるとも指摘します。「労働階級がエリートから見下されていると感じるのです。『成功したければ努力して大学へ行け』と言うだけでは労働の尊厳を無視することになります。社会の一人一人に敬意が払われなければなりません」

人生のあらゆる要素は自己責任?

美学者で東京工業大学未来の人類研究センター長を務める伊藤亜紗教授

 「日本も自己責任論が2000年ごろから強まってきた。最近では新型コロナウイルスへの感染も自己責任と見なす風潮がある」。伊藤教授と中島教授の問題提起を聞いたサンデル教授は、2人に問いかけます。「人生のあらゆる要素が自己責任であるという見方は、新自由主義がもたらしたここ数十年のグローバリゼーションと関係があるように見えます。この傾向は日本よりアメリカの方が強いと思いましたが、今回の新型コロナをきっかけに日本の方がその傾向が強まっているのかもしれない。その理由は何でしょうか」

日米の学者が白熱議論

政治学者で東京工業大学未来の人類研究センター・「利他プロジェクト」リーダーの中島岳志教授

 困難を乗り越えて成功した指導者が、どうして弱者に厳しく、自己責任論を強調するのか。そもそも自分自身の能力は、百パーセント自分自身の努力で得られたものなのか。運、そして社会とのつながりは、どう作用するのか。日米の気鋭の学者による議論は「白熱教室」のように熱を帯びていきます。

 「勝者と敗者の分断をなくすために、私たちが取り戻さなければいけない」とサンデル教授が強調したものは何か。答えは動画をご覧ください。