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絵本ナビ編集長おすすめの新刊絵本10冊は…? 「NEXTプラチナブック」(2021年6月)

【この記事で紹介する絵本】

ふんわりと心地の良い風が吹く絵本『ねたふりゆうちゃん』

『ねたふりゆうちゃん』(作:阿部 結/白泉社)

あらあら、また今日もゆうちゃんが「ねたふり」をしていますよ。机の上でお絵描きをしている途中かな。そのまんま机の上に頭を乗せて、目を閉じて。場所だって色々、ゆうちゃんは上手に「ねたふり」をします。なぜかっていうとね……。そこにあるのは、お母さんとゆうちゃんのふたりだけの時間。可愛らしさの裏に、ほんのり漂う心細さやさみしい気持ち。おかあさんはそっと優しく拾いあげます。どこを切り取っても微笑ましく、ふんわり柔らかなこの絵本。作者は注目の新人絵本作家・阿部結さんです。

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編集長のおすすめポイント

なんといっても、上手に「ねたふり」をしているその姿の愛らしさといったら!  ほんのちょっぴりの期待とわがままのこもった表情は、大人にはただただ可愛らしくても、子どもたちにとっては自分ごと。

「ちゃんと来てくれるかな……」

だからこそ、後半の出来事に心が大きく揺れてしまうのです。大丈夫、読み終わったら親子で心置きなくお昼寝時間を満喫してくださいね。

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ありえなくもないかも……しれない? 絵本『ありえない!』

『ありえない!』(作:エリック・カール、訳:アーサー・ビナード/偕成社)

さあみなさん、あっと驚く「ありえない」ショーが始まりましたよ。カンガルーのお腹から顔を出しているのは? ヘビのケンカの原因は? ドラネコの首輪を引っぱっているのは? どこまでも行けるタクシーの正体は……? いやいや、そんな。ありえないでしょ。この絵本がお届けするのは、みんなが考えたこともない、常識破りでヘンテコリンな場面の連続。立場が変われば、見え方も変わる。できないと思っていたことも、できるかもしれない。そこにはおかしさと、ほんのちょっぴりの悲しみもあったりして。みんなの頭が混乱してきた頃。

「なああんちゃって!」

ほらほら、エリック・カールさんが絵本の向こうで舌を出して笑っていますよ。

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編集長のおすすめポイント

ぱっと見たら普通でも、よーく見るとなんだかおかしい。いやいや、かなりおかしい。変だよぜったい、これ間違ってるよ! このおかしな世界を楽しむには、 読みながら、どんどん大きな声をあげてみるのが一番。さあさあ、どこがおかしいの? こんなこと絶対ありえないって本当に言える? 最後はみんなで大笑い。「ああ絵本って面白い」そんな気持ちになってくれたら、大成功ですね。

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すたっ! 見事に着地を決めたのは……『おやつトランポリン』

『おやつトランポリン』(作:大塚 健太、絵:小池 壮太/白泉社)

美味しそうないちごが、トランポリンで「ぽよーーん」と跳ねて……「すたっ!」おみごと! きれいに着地を決めたのは、クリームたっぷりケーキの上。ショートケーキの完成です。これは気持ちがいい。次にやってきたのは、チョコレートにさくらんぼ。次は……? 楽しい音にのせられて軽快に躍動するのは、濃密なのに愛らしく、顔があるのにリアルなたべものたち。なんて魅力的なのでしょう。解放感と満足感、同時に味わえるこの絵本。親子で一緒にくりかえし楽しんでくださいね。

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編集長のおすすめポイント

トランポリンとおやつ。その組み合わせの最強さといったら! こんなに相性がいいなんて考えもつかなかったのに、見ればすぐに納得。私たちの大好きなあのデザートは、本当はどれも一回トランポリンを挟んで出来上がっているのではないかと思うほど。ひとつも無駄のない言葉と展開、子どもたちの心を掴むテンポを知っています。チョコがパリッとしていたり、もちがもっちもちしていたり、バターがてろんと溶けかかっていたり。お話に喜んでいる子どもの横で、大人は存分にとろけてしまってください。

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次々にみんなが楽しませてくれる絵本『あかちゃんですよ はいどうぞ』

『あかちゃんですよ はいどうぞ』(文:うしろ よしあき、絵:鈴木 智子/アリス館)

とっことっこ、赤ちゃんと一緒に歩いているのはおサルさん。今度はカンガルーさんのお腹にはいって、ゆっさゆっさ。クマさんにおぶってもらって、ゾウさんのお鼻にぶらさがって。楽しそうだね、赤ちゃん。登場する動物たちは、大きくて立派で生き生きとして。だけど、とっても優しく遊んでくれます。まるで夢のような展開が続きます。だけど、喜んでいるのは赤ちゃんだけじゃありませんよね。動物たちも、読んでいる大人の方も、みんなが嬉しくてたまらなくなってくるのです。

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編集長のおすすめポイント

この絵本の中にある「みんなで子育て」という大きなテーマに共感してしまうのは、描かれている赤ちゃんが、どこまでも愛らしく、魅力的だからこそ。まだおぼつかない足どりも、好奇心で輝く瞳も、嬉しそうに動物たちとタッチする小さな手も。そして、なによりお父さんとお母さんを見つけた時の嬉しそうな笑顔も。小さな子どもたちは、自分のことのように。そして大人は全ての可愛い子どもたちを思いながら。この幸せな気持ちをみんなで一緒に育てていけたらいいですよね。

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あんなに大きかったはずなのに……?『くまちゃんがちいさくなっちゃった』

『くまちゃんが ちいさくなっちゃった』(文:トム・エリヤン、絵:ジェーン・マッセイ、訳:なかがわ ちひろ/光村教育図書)

おとうさんがくれたのは、とっても大きなくまのぬいぐるみ。ぼくのベッドにすわればいっぱいになっちゃうし、移動させるのも大変。だけどいつもぼくを守ってくれるから大好き。ところが……

「あれっ、くまちゃんが ちいさく なってる」。

おとうさんは、そんなことないよって言うけれど。ぼくとおんなじ大きさになっちゃった。でもふたごの兄弟みたいだし、そんなくまちゃんも好き。だけどおかしいな。くまちゃんはどんどんちいさくなっていくみたいで。この絵本では、くまのぬいぐるみとのふれあいを通して、成長していく不思議を「ぼく」の視点から描きます。いつまでも心にとどめておきたくなる、宝物のように愛しい時間です。

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編集長のおすすめポイント

見上げるほど大きなくまちゃんと、タンスの上に置かれたくまちゃん。同じくまちゃんだっていうことはわかっていても、こんなに大きさが違うのには、大人だって驚いてしまいます。だけど、ぼくには本当にこんな風に見えているのだと思うのです。成長してやってくるのは「小さな子どもだった世界」との別れ。絵本の中でも、それは繰り返し描かれます。大人が読んで思う味わい方、子どもが見えている世界、その違いはそのままで。そっと送り出していってあげたいですね。

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みんなと手をつないで上を向けば……『おひさま わらった』

『おひさま わらった』(作:きくち ちき/フレーベル館)

かぜとさんぽ、森には誰がいるのかな。虫たちがひそひそ話し、花たちがゆれ、ちょうちょも一緒に踊ってる。地面には、知らない生きものたちがうごめいて。あ、飛んだ! 鳥たちを見ていると、なんだか空と手をつないでいるみたい。わたしもかぜと手をつないで、みんなと空を見上げれば、そこでわらっていたのは……。きくちちきさんの新作絵本は、木版画で描かれた「いのちのつながり」。青、赤、黄、黒、それぞれの色が生き生きとし、ある時は単体で、ある時は重なり合い、美しい景色となって目に飛び込んできます。心躍る春の絵本。

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編集長のおすすめポイント

美しい装丁の絵本を手に取り、紙質を感じながら、登場する虫や植物、すべての生き物と対話をし。明るく輝く色にうっとりしながら、絵本の中の世界へ引っぱり込まれていく。そして気が付けば、自分はもしかしたらひとりではないのかも、と感じることができている。この体験に、大人も子どもも関係ないのかもしれませんよね。早くみんなで手をつなぎたいものです。

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ほんとうは好き? 嫌い?『しんゆうだけどだいきらい』

『しんゆうだけどだいきらい』(作:石山 さやか/ 岩崎書店)

幼なじみのみかりとしずく。毎日一緒に学校に行くし、クラスも同じ、席も隣どうし。みかりは、おしゃべりが大好きで、ぽんぽん言葉が出てくる。しずくはおっとりしているから、うんうんとうなずくことが多い。一緒にいると、とても楽しいし、すごいなあと思う。だけど……わたしの話、ちっとも聞いてくれてない。今日だって、わたしが失敗したことを、あんな風に言って!

「みかりちゃんなんて、だいきらい」

やっと言えた、わたしの思っていたこと。だけど……。

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編集長のおすすめポイント

いつも一緒にいるからって、仲良しなわけじゃない。仲が良いからって、いつも好きなわけじゃない。私にだって、言いたいことはある。だけど、自分が思っている事を言えたからって、本当にそのままでいいのかな。離れたところから見ると、みかりちゃんの違う部分が見えてきた。

しずくちゃんは、私。子どもの頃の自分であり、今の自分でもあって。隣にいる子のこと全部知っていると思っていたら大間違い。世の中は、まだまだわからない事だらけ。この絵本をきっかけに、ぐるぐる悩みながらも一歩を踏み出せる子がいることを願います。

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ひとりじゃないよって、語りかけてくれたのは……『二平方メートルの世界で』

『二平方メートルの世界で』(作:前田 海音、絵:はた こうしろう/小学館)

病室のベッドの大きさは、たて約2メートル、幅約1メートル。その周りをぐるりと囲うカーテンの中が入院中のわたしの世界のすべて――。

札幌に暮らす小学3年生の女の子、海音ちゃん。彼女は、脳神経の病気の治療のために、3歳の時から定期的に入退院を繰り返している。彼女は大抵の事は「わかっている」。だけど、やっぱりつらい気持ちになる事がある。孤独を感じたり、怖くなることだってある。そんなある日、彼女の目に思わぬ光景が飛び込んできた……!

「ひとりじゃないよ」

ベッドの上で海音さんの見つけた大事な発見とは。前田海音さんが3年生の時に書いた作文が 「子どもノンフィクション文学賞」を受賞し、絵本作家はたこうしろうさんとのコラボレーションにより誕生した絵本です。

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編集長のおすすめポイント

みんなと同じようにランドセルを背負い、元気に登校する彼女。でも年に何度も大学病院に入院し、検査を繰り返している。良い結果がなかなか出ず、奇跡だっていまのところ起こらない。そんな状況であることは、本人から聞かない限り、なかなか伝わってくることではないのです。でも、彼女はとても冷静に、切実に、その心の奥底にある自分の気持ちを、私たちに語ってくれています。

それをまっすぐに受け取り、彼女のことを思い、また同じような立場にいる子のことを想像し、さらに自分の状況にも置きかえてみる。そうやって、誰かのことを知ろうとする努力こそ、今大事にしたいですよね。

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アンナ・アトキンスと世界で最初の青い写真集『青のなかの青』

『青のなかの青』(作:フィオナ・ロビンソン、訳:せな あいこ/評論社)

空の色は、青のなかでも、とびきりの青。
海の色は、青のなかでも、とくべつの青。

「世界で最初の女性写真家」として知られている、19世紀のイギリスの植物学者アンナ・アトキンス。彼女が残したのは「青のなかの青」……日光を利用した、サイアノタイプという美しい青の写真。殆どの女性が科学教育を受けられなかったという当時の社会で、アンナがどのように自分の世界を切り開いていったのか。どうやって、この美しく科学的な写真集を残していったのか。この絵本では、科学者である父の深い愛情のもとで過ごす、子ども時代のアンナを丁寧に描き出すことで、一人の慎ましくも研究熱心な学者の人生をうつしだします。

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編集長のおすすめポイント

色々なものを集め、名前を調べ、観察をし、整理していく。この一連の作業が楽しくてたまらないアンナ。同じ環境にいなくとも、同じ職業を目指さなくとも、夢中になることの素晴らしさが存分に伝わってきますよね。どんな困難な時代の中でも、壁を乗り越える一つの生き方として、方法として、子どもたちにもぜひ触れてもらいたいお話です。

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どんどんおかしなものが出てくる絵本『どんめくり』

『どんめくり』(作:やぎ たみこ/ブロンズ新社)

うわあ! 美味しそうな「てん丼」に「かつ丼」に「カレーライス」。全部大盛り、大迫力! どんどんめくると、どんどん続くよ。「かっぱまき」に「おにおにぎり」…あれ、なんだかおかしくなってきた。「すやすやパンケーキ」? 「ゴロゴロアイス」ってなんだ? それに、この絵本。上下別々にめくれるようになっている。ということは? やぎたみこさんによる、食べものしかけ絵本。へんてこりんな組み合わせ、その数何と241種類! 上下の切り口の曲線も絶妙な演出、ひたすらどんどんめくってみてくださいね。

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編集長のおすすめポイント

めくりながら大笑い! そんな子どもたちの姿を見てしまうと、なんだか説明は不要な気がしてきちゃいます。だって、てんぷらパフェがあったら。パンケーキの上にきつねが乗っていたら。笑っちゃいますよね。みんながみんな楽しめる、明快な「おもしろ」しかけ絵本。どんな時間に、どんな姿勢で読むのがより効果的なのか。お気に入りはどれか、一番おかしいのはどの組み合わせか。子どもと一緒に、大人も本気で研究してみてくださいね。

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 絵本ナビ編集長がおすすめする「NEXTプラチナブック10選」はいかがでしたでしょうか。対象年齢も、あつかっているテーマもさまざま。気になった絵本があったら、ぜひ手にとってみてくださいね。絵本ナビ「プラチナブック」ページへ