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『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』 「現金安売り掛け値なし」お手本に 

 著名な経営学者、ピーター・ドラッカー氏に「マーケティングの元祖である」と絶賛された日本人がいるのをご存じだろうか。しかも、400年前に生きた江戸商人。呉服店「三井越後屋(のちの三越)」を起業した三井高利だ。

 本書は、そんな紹介から始まる。「イノベーション」や「ベンチャー経営」という横文字の響きはどこか未来的だ。しかし、実在した12の江戸商人の事例を読めば、温故知新の「温故」にこそ大いなるヒントがあるのだと腑(ふ)に落ちる。物語性によって商品を差別化する「ストーリーブランディング」を専門とする著者が、当時の起業家の成功則を、現代のビジネスと結びつけながら解説。だから、400年という時を超えた実践のイメージが即座にわく。

 例えば、冒頭で紹介した三井高利は「現金安売り掛け値なし」という1行コピーや、ロゴ入り番傘の無料貸し出しで、広告戦略に成功。訪問型のビジネスモデルから店頭販売へ転換することで顧客層を一気に広げたのは、今でいう「ダイレクトマーケティング」のお手本だ。

 12の事例を読み終えた後に学べるのは、マーケティングセンスだけじゃない。本質を抽出し、他へ応用する力だ。=朝日新聞2021年7月3日掲載