1. HOME
  2. インタビュー
  3. 子どもの学び
  4. 『数字でわかる!こどもSDGs』秋山宏次郎さんインタビュー 「直撃世代」こそ、自分ごととして考えて

『数字でわかる!こどもSDGs』秋山宏次郎さんインタビュー 「直撃世代」こそ、自分ごととして考えて

秋山宏次郎さん

今の世界の状況って?

――『数字でわかる!こどもSDGs』は、第一章が「新型コロナが世界に与えた影響を見てみよう」です。とてもタイムリーで子どもにもわかりやすいと感じました。

 (2020年8月に出版した)『こどもSDGs』に続けて2冊目となるのですが、いまはコロナで激動の世界になっているので、具体的に現在の世界ってどういう状況なの? ということを知る続編を出したいと思っていました。コロナで悪化する貧困率やアメリカでのアジア系市民に対する人種差別などを、データとして取り上げています。

 「新型コロナで1億6800万人のこどもが学校に通えなくなった」というページは、実際日本でも休校があったため、子どもたちも「これ、ぼくのことじゃん!」とストレートに思ってくれたようで、反応は大きかったです。コロナはリアルタイムで動いている話なので、1年もしたらこの数字自体もだいぶ変わっていると思います。逆にその変動を作らないといけないと思っていて、これから先のデータも追っていただけるとより理解が深まると思います。

――SDGsを子どもに教える大切さはどのように考えていますか?

 ぼくらのような大人より何十年も長く生きる子どもは、環境破壊の影響を一番受ける「直撃世代」です。自分ごとだと思うので、より深く考えてもらえたらいいなと思います。それに、いまやっている勉強が、社会問題を考えるときにすごく役立つということを知ってほしいですね。

 たとえば、コロナの感染者がいまのペースで増えていったら、2カ月後にはどうなっていくかを計算するために数学が使えたり、海上に風力発電の設備を作るために、どういう素材や形状で浮かび続ける土台を作るかを考えるために物理の勉強が役立ちます。ぼくが学生の時代は、物理の浮力の問題なんて生活に何も役立たない、浮かぼうが沈もうがどうでもいいじゃんと思ってたんですけど(笑)、教科書で習う理論がリアルな社会と繋がっている実感は、理論への興味を高め、理解も深めます。そのためSDGsを絡めた授業やテスト問題をつくる先生も増えてきていますね。

ラベルを探すことからSDGs

――子どもにいまできることはどんなことがありますか?

 年齢によって違うと思うのですが、中高生ぐらいになれば、温暖化などの仕組みも理解できるので、リアルな問題をストレートに伝えるだけで、自分の頭で考えていけます。最近は、エコイベントに高校生が制服姿で登壇することも少なくないです。この本でもクイズや問題提起など、自分なりに考える余地を意識的に残しています。

 幼児でも、大人が手助けすることで、自分ごととして考えるきっかけを作れます。保育園の講演で、保育士がSDGsを教えるにはどうしたらいいかと問われて、いろいろ考えましたね。たとえば、親子でスーパーに行ったとき、「100円までならおやつを買っていいよ」と促すことがありますよね。そのときに、サスティナブル認証(環境・社会的配慮、生物多様性等につながるものとして認証を受けた証)のラベルがついていたらプラス50円までOK!にすることを提案しました。SDGsが急に自分ごととなるので、子どもはめちゃくちゃ探すようになりました(笑)。

 ほかにも、地球環境への負荷が少ない給食のメニューを考え、子どもたちがどれを食べたいか決めるというリクエスト給食もやりました。少しでもサスティナブルなことが子どもの記憶に残れば、成長する過程で知識も増え、できることも増えていくので、どんどん自走していける大人になっていくんじゃないかなと思っています。

 子どもたちにちゃんとした世界を残すのは、大人の責任だとぼくは思っています。環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんのように、自分なりに考えて、サスティナブルな世界を作りたいと言っている子はけっこういるんです。彼らにバトンを渡して、問題解決を任せていく度量も大人に必要なのかなと思いますね。SDGsの課題は決して他人ごとではないですし、世界を作っているのは個々人の行動です。みんなで一緒に世界を変えていきましょう!