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村上春樹さん×柴田元幸さんの対談集「本当の翻訳の話をしよう」 翻訳への尽きぬ愛

 作家で翻訳家の顔も持つ村上春樹さんと、翻訳家の柴田元幸さんによる対談集『本当の翻訳の話をしよう』の「増補版」(新潮文庫)が刊行された。

 2019年にスイッチ・パブリッシングから刊行された書籍版の内容に加え、新潮文庫の「村上柴田翻訳堂」シリーズに掲載した対話6本などを新たに収録。翻訳という行為への2人のこだわりと愛情が、リラックスしたやりとりからにじみ出す。

 異色なのは、日本の小説を英語圏の読者に紹介する目的で村上さんが書いた「切腹からメルトダウンまで」と題する文章。収録されているのは日本語のバージョンだが、英訳が先に世に出たといい、漱石や谷崎のほか、小川洋子さん、星野智幸さんといった現代作家の作品に言及している。ごく控えめながら、村上さん自身の作品にも。

 締めくくりの対話には、村上さんの「翻訳するときに一番気をつけているのは、同じ文章を二度読ませないっていうこと」という言葉が。「これどういうこと?」と思わず読み直してしまう文章はよくないと述べ、柴田さんも賛同している。この記事、大丈夫でしょうか。(柏崎歓)=朝日新聞2021年8月11日掲載