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「青いつばさ」ほか子どもにオススメの8冊 命のきらめき、見つめて

「青いつばさ」

 ジョシュは知的障がいのある兄の面倒をいつもみている。ある日、兄弟は湖でつばさを痛めて群れから置いていかれたツルの子を見つけ家に連れて帰ることにした。ツルに飛び方を教えようと夢中になった兄は弟にけがをさせてしまう。そのことが原因で兄は施設に入れられそうになるが――。障がいのある兄を持つ弟の心の痛みや兄を守ろうとかばうけなげさに胸が打たれる物語=小学校高学年から(シェフ・アールツ作、長山さき訳、徳間書店、1760円)

「天山の巫女(みこ)ソニン(1)黄金の燕(つばめ)」

 生後まもなく天山の大巫女に見込まれて巫女としての修行を始めたソニンだが、12歳の時巫女としての才能がないと里へ帰される。里のくらしにも慣れてきたある日、ソニンは沙維(さい)の国の王子イウォルが落としたお守り袋を拾い、それを届けたのが縁で王宮に仕えることになる。不思議な力を持つソニンのそこからの活躍が壮大なファンタジーの序章となる=小学校高学年から(菅野雪虫作、講談社、1540円)

【以上、ちいさいおうち書店店長・越高一夫さん】

「こうさぎとおちばおくりのうた」

 4ひきの子うさぎきょうだいが、祭りの花火の音に誘われて、落ち葉行列に参加したり、森に入って歌ったりはねたりするうちに、道に迷ってしまう。一面落ち葉に覆われた森は、様子が変わっていたからだ。助けてくれたのは、ブナの大木「ぶなじい」。冬になる前の美しくかがやく自然の中に入り込んで、子うさぎたちと一緒にささやかな冒険を楽しめる絵本=5歳から(わたりむつこ作、でくねいく絵、のら書店、1760円)

「火曜日のごちそうはヒキガエル」

 冬は地面の下で過ごしているはずのヒキガエルのウォートンは、どうしてもおばさんにお菓子を届けようと外へ出てしまう。するとミミズクにつかまり、火曜日に誕生日を迎えるミミズクのごちそうにされることに。逃げ出せずにとうとうその日が来て万事休すとなったとき、不思議なことが次々に起こる=小学校中学年から(ラッセル・E・エリクソン作、ローレンス・ディ・フィオリ絵、佐藤凉子訳、評論社、1210円)

【以上、翻訳家・さくまゆみこさん】

「ゆきのようせい」

 雪虫は冬の訪れを知らせるために土の中から旅立つ。でもうまく飛べないし、みんなはもう冬が来ることを知っているみたい。ぼくの知らせを待っててくれる人はいるのかな……。雪虫は寿命の短いアブラムシ科の生き物で、翅(はね)があるのも1年で一瞬だけなのだそう。はかない命のきらめきが、新しい季節の訪れとともに感動を与えてくれるからだろうか。雪虫との出会いに心が温かくなる=3歳から(松田奈那子作、石黒誠監修、岩崎書店、1540円)

「オイモはときどきいなくなる」

 モモヨは小学3年生。泣きながらおかわりできるくらい食い意地が張っている。飼い犬のオイモは時々いなくなるけれど今日は夜になっても帰らない。曖昧(あいまい)な生と死の世界は実にゆるやかにつながっている。幸せな人生を終え死を優しく迎えるために、しっかりと食べ日々を味わいながら、必死に生きていくことが大事だと強く思う=小学校中学年から(田中哲弥作、加藤久仁生画、福音館書店、1540円)

【以上、丸善丸の内本店児童書担当・兼森理恵さん】

「ほんやねこ」

 今日は早めに店じまい。本屋のねこはいい気分で夕方の散歩へ。ところが閉め忘れた窓から強風が。棚の絵本がめくられ、物語の主人公たちは外へ飛ばされてしまう。動きのある構図の展開が読者を一気に絵本へ引き込む。困った事態に気づいても、本屋のねこはマイペース。ピノキオ、シンデレラ、チルチルとミチル……見つけ出しては背中に乗せて散歩を続ける。物語と暮らすよろこびに包まれる=4歳から(石川えりこ作、講談社、1760円)

「いつも だれかが…」

 幸運だった人生を振り返る病床の祖父の話に、孫が耳を傾ける。少年の頃から幾度も危ない目にあいながら無事だったこと。戦争があり、飢えに苦しみ、人を好きになり、父になり、祖父になり……いろいろあっても今日まで生きてこられたこと。絵にはユーモラスで母性的な天使の姿がいつもそばに。幸福と感謝の気持ちはそっと孫に引き継がれる=5歳から(ユッタ・バウアー作・絵、上田真而子訳、徳間書店、1870円)

【以上、絵本評論家・作家の広松由希子さん】=朝日新聞2021年11月27日掲載