1. HOME
  2. インタビュー
  3. 著者に会いたい
  4. 広松由希子さん「日本の絵本 100年100人100冊」インタビュー 先達の工夫をつなぐ試み

広松由希子さん「日本の絵本 100年100人100冊」インタビュー 先達の工夫をつなぐ試み

広松由希子さん

 大正から平成の約100年に出版された絵本の中から、100人の作家による100冊を選び、それぞれについて論じていく。この途方もない仕事を一人でやり遂げた。「『なんであれが入ってないの?』という意見も当然あると思う。この本をたたき台にして、議論がふくらんでいくことが願い」と話す。

 「日本の絵本について、まとまった形の本を書かないか」と依頼を受けたことがきっかけだった。絵本の歴史の流れが浮かび上がるものをと考えたが、全てを網羅しようとするときりがない。100人に絞り、作家ごとに1冊を選ぶことにした。

 大判のオールカラーで1冊につき2ページを割いた。実際の作品の空気感がより伝わるようにと、見開き状態の画像を複数枚ずつ掲載している。

 取り上げた絵本は必ずしも代表作ではない。たとえば佐野洋子さんは『100万回生きたねこ』ではなく『うまれてきた子ども』。『ふしぎなえ』や「旅の絵本」シリーズで知られる安野光雅さんは、谷川俊太郎さんが文を書いた『あけるな』という本で紹介した。「作家の本質が表れていると自分が感じるもの、『この本でこの人を語りたい』と思う作品を選びました」

 懐かしがってもらおう、という本でもない。巻末に、1870年から2020年までの、国内外の絵本にまつわる出来事をまとめた年表を付けた。歴史の縦軸だけでなく、同時代の海外の動きという横軸と見比べてもらうことで、日本の絵本の今を相対化する狙いがある。

 時代を映しつつ、時代を超えて光る絵本表現を解きほぐし、今へとつなげる試みだ。「先達がどんな工夫を重ねてきたか、私たちはもっとくみ取っていけるはず。縦軸にも横軸にも交わり合って、日本の絵本がより面白くなれば」(文・松本紗知 写真・菊池康全)=朝日新聞2022年1月15日掲載