「この30年の小説、ぜんぶ」
平成から令和に出た小説などを、作家と評論家が「とてつもなく長い時間、読んで話した」(斎藤さん)。雑誌「SIGHT」での対談連載が中心。震災後やコロナ禍の文学から、作品の底に圧縮されている「社会」の痕跡をひたすら探し求める。選書一覧と主な出来事の年表も。
★高橋源一郎・斎藤美奈子著 河出新書・1078円
「ブルシット・ジョブの謎」
地位と報酬は高い。でも無意味で虚偽に満ちた、どうでもいい仕事がなぜ増殖しているのか。人類学者D・グレーバーが現代資本主義社会の矛盾を鮮やかに突き、反響を集めた一冊を、訳者が解説する。エッセンシャル・ワーカーやベーシック・インカムの問題にもふれる。
★酒井隆史著 講談社現代新書・1012円
「保健所の『コロナ戦記』 TOKYO2020-2021」
医師である著者は、特別区の保健所課長、東京都の感染症対策部門の課長としてコロナ対策の第一線で指揮を執った。4回の緊急事態宣言が出され、五輪が強行された東京。日々のメモを元に、「体力や能力の限界」と闘う職員と組織の姿を生々しく伝える。
★関なおみ著 光文社新書・1210円
「江戸」
ドラマや小説で「大江戸八百八町」と呼ばれた大都市は、どうつくられたのか。平安末期に秩父平氏の一族・江戸氏が拠点とした低湿地は、太田道灌の築城などを経て、徳川家康によって城が拡大され、町が整備された。その変遷を、江戸東京博物館学芸員が絵図や考古学研究成果も踏まえてたどる。
★齋藤慎一著 中公新書・902円
「教養としての仏教思想史」
成立から現在に至る仏教の全体像を概観した格好の入門書。住職で東京大名誉教授の著者は、仏教とは「人類が生み出した、一つの価値ある思想・文化の総体である」と本書で説く。開祖ゴータマの生誕に始まり、諸派に分かれて各地へと広がっていった仏教思想の基本がわかる。
★木村清孝著 ちくま新書・1265円=朝日新聞2022年1月15日掲載