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「言の葉の森 日本の恋の歌」 時代と言語超えて味わう名歌

 太宰治全集などの韓国語訳を手がけたソウル出身の翻訳家が、小野小町や清少納言などの和歌65首をモチーフに日常生活や仕事についてつづったエッセー『言の葉の森 日本の恋の歌』(チョン・スユン著、吉川凪〈なぎ〉訳、亜紀書房・1760円)が昨年11月に出版された。原書を読んだ編集者の斉藤典貴(のりたか)さんが、自由な発想で和歌の魅力を伝える内容にほれ込み、邦訳の出版を企画した。

 65編の各エッセーは、和歌の原文と韓国語訳、日本語の現代語訳から始まる。紫式部の「めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月影」を引いた1編では、早稲田大大学院時代に知り合った仲の良い友達との思い出や再会が温かみのある筆致でつづられる。和歌と著者の実体験が時代と言語を超えて交わることで、名句たちがより味わい深くなる。斉藤さんは「日本の若者にも和歌への興味を持ってもらえたら」と語る。(川村貴大)=朝日新聞2022年1月15日掲載