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『仕事から見た「2020年」』書評 テレワーク普及させる労使とは

評者: 神林龍 / 朝⽇新聞掲載:2022年04月16日
仕事から見た「2020年」 結局、働き方は変わらなかったのか? 著者:玄田 有史 出版社:慶應義塾大学出版会 ジャンル:経済

ISBN: 9784766428063
発売⽇: 2022/03/12
サイズ: 20cm/262p

地球規模で席巻したコロナ・パンデミックは、人々の暮らしと働き方に大きな影響を与えた。全国調査のデータを用いて働き方の変容などを多角的に分析し、わが国の労働市場にはどんな構…

『仕事から見た「2020年」』 [編]玄田有史・萩原牧子

 新型コロナウイルス感染症の流行がはじまって2年半、影響を検証する時期にさしかかってきた。日本の労働市場でのコロナ・ショックにまつわる12の話題についての論考を集め、本書が問いかけるのはまさに直球、「結局、働き方は変わらなかったのか?」である。しかし回答はストレートではない。変わったところもあるし、変わらなかったところもあるからである。
 5年前の『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』でも見せた玄田有史の編集手腕は健在で、今回は、1章を20ページ程度にまとめ、グラフによる平易な解説がこころがけられている。所得格差だけではない、ワークエンゲージメント(仕事に対する心理状態)の格差はコロナ禍でどうなったのか。都市・地方の差、企業規模間の差は拡(ひろ)がったのか、正社員と非正社員の二極化は進んだのか、テレワークの普及はワーク・ライフ・バランスを保ったのか、休業はどんな影響をもたらしたのかなど、今何が起こっているのか、誰もが知りたいと思っていることが、特に経済学の知識がなくとも理解できる構成だ。
 評者は、労働者代表制など、労働者が会社と交渉する組織や手段が、テレワーク普及の必要条件の可能性があるという指摘に思わず膝(ひざ)を打った。日本的雇用慣行は、労使コミュニケーションを最も重視するシステムだ。テレワークは日本的雇用慣行からの解放を導くというよりも、むしろコロナ禍に傷ついた日本的雇用慣行を癒やしてくれる役割なのかもしれない。
 本書の特徴は、なんといっても全編がリクルートワークス研究所による「全国就業実態パネル調査」に基づいている点である。5万人という規模で、コロナ禍の前から同一個人を追跡している日本では数少ない調査であり、コロナ禍で人々が何を変えたのかがはっきりとわかる。本書の冒頭でいくつかの数表が簡単にまとめられており、その数字の迫力を感じてほしい。
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げんだ・ゆうじ 1964年生まれ。東京大教授▽はぎはら・まきこ 1975年生まれ。リクルートワークス研究所。