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“バカメルヘン”に癒される「コジコジ万博」開幕、原画130点やクリエイターの新解釈で作品世界を再構築

序盤で来場者を出迎える「ギャグ50連発」

巨大コジコジ、来場者に「遊んで食べて寝てちゃダメ?」と問いかける

 展示会場へ入る前に展示されているのは、さくらさんが初めて描いたコジコジの原画です。横には、さくらさんの肉筆で綴られた誕生エピソードが。本展プロデューサーの草刈大介さんはこの点に触れ、「コジコジがさくらさんを導いてどんどん世界が広がったように、この企画もコジコジに突き動かされるように、スタッフがそれぞれ創造性を発揮していきました」と内覧会の冒頭で挨拶しました。

さくらももこがはじめて描いたコジコジの原画、1991年 ©️さくらももこ

 メルヘンの国(展示会場)へ向かうには、来場者全員がしめ縄飾りの神棚をイメージさせる門を通過します。展示空間のデザインを手がけたCEKAIの福田哲丸さんが、ギャラリートークで「無表情で芯を食ったことを淡々と話すコジコジは、自分にとって仏様や神様みたいな超然とした存在でした」「そんなイメージと、さくらさんのおっしゃる“バカメルヘン”の世界観を造形のヒントにしています」と話していた内容が思い浮かぶ出だしです。

暖簾のようなしめ縄飾りをくぐり、コジコジたちの暮らす「メルヘンの国」へ

 身長155cmの筆者が腰をかがめてくぐり抜けると、冒頭の写真で紹介した「ギャグ50連発」なる空間がお出迎え。プロジェクションマッピングで表情やセリフが次々に変わっていく巨大なコジコジの顔が浮かんでいます。記名ミスでマイナス5点を記録したテスト結果を受け、先生に「向上心がなさすぎる」「毎日一体何をしているんだ」と叱られた時に言い放つ、

えっ悪いの? 遊んで食べて寝てちゃダメ?

という名(迷)言はもちろん、あきれ果てた教師から「将来は何になりたいのか、せめてそれだけでも先生に教えてくれ」と請われたあと、

生まれた時からずーっと将来も コジコジはコジコジだよ

と言ってのける有名なフレーズも、アニメ版でコジコジに声をあてている、あおきさやかさんのキャラクターボイスで聴くことができます。

集英社 りぼんマスコットコミックス 新装再編版『コジコジ』3巻より ©️さくらももこ

 これは、パビリオン「ギャグ50連発」に展示されている漫画のひとコマ。0点は無価値という「常識」を根底からくつがえす愚直なまでのピュアさに、社会から「優秀であれ」と成長を求められ消耗する人々は癒されるのかもしれません。

電気グルーヴのEDテーマに合わせて踊る「ディスコ☆ポケット カウボーイ」

 続いて広がるのは、コジコジが通う学校の教室をイメージした「コジコジと仲間たち」エリア。コジコジの言動をすべて拾い冴えたツッコミを入れる半魚鳥の次郎をはじめ、有名人のサイン集めが好きな太陽の城の王様・ゲランら24体のキャラクターが並びます。傍らには、それぞれ見せ場のシーンを描いた漫画の原稿が。個性豊かな性格やゆかいな特徴が、さくらさんの言葉で解説されています。

パビリオン「コジコジと仲間たち」の様子

右:集英社 りぼんマスコットコミックス 新装再編版『コジコジ』1巻より ©️さくらももこ

 さらに奥へ進むと、恋の悩みや容姿コンプレックスを抱えるキャラクターの心のモヤモヤで埋め尽くされる「モヤモヤトンネル」や、宙に浮かぶスクリーンに友だちを想って揺れ動く感情や優しさが映し出される「エモーショナルフレンズヒーリングゾーン」が登場。切り株や丸太に腰かけ、のんびり鑑賞したい。

パビリオン「エモーショナルフレンズヒーリングゾーン」の様子

 アニメ「コジコジ」を観ていた層には懐かしい初期(第1話〜第66話)のエンディングテーマ、電気グルーヴ「ポケット カウボーイ」が流れるサイケデリックな空間にはお立ち台が! この「ディスコ☆ポケット カウボーイ」ではバックに流れる映像に合わせ、お立ち台の上でキャラクターと一緒に踊ることができます。パビリオン内に用意されているテレビ型のフレームを使って撮影すれば、まるで来場者もテレビの中でダンスしているよう。真顔でシュールに決めるもよし、楽しく盛り上がるもよし、楽しみ方はあなた次第です。

パビリオン「ディスコ☆ポケット カウボーイ」の様子

 原画を展示している空間の一画には、ゲランが集めた有名人のサインコレクションがお目見え。誤字や汚文字だらけの一品に、思わずほくそ笑んでしまいます。メルヘンの国で唯一の人間ながら記憶がなく、自分が何者かわからないと悩むジョニーを励まそうとコジコジが書いた「ジョニー、げんきだしな」という手紙も必見です。

右:あくまのブヒブヒ&ナゾ怪人のスージーが、来場者に法外な値段をふっかけながら展示へいざなう

 もちろん、さくらさんの筆づかいを間近に堪能できる原画ラインナップも盛りだくさん! 同じくさくらさんの代表作『ちびまる子ちゃん』のまる子と祖父・友蔵が『コジコジ』の世界にやって来た第29話の原画は、両作品のファン垂涎でしょう。まる子はゲランにサインをねだられ、友蔵は雪だるまのコロ助に「心の俳句」を求められるボーダーレスな越境ぶりに、ほっこりします。

左:漫画『コジコジ』第14話 正月君の活躍だ!!の巻 扉絵 原画、1996年 ©️さくらももこ

漫画『コジコジ』第29話 まるちゃん達がやってきたの巻 扉絵 原画、1997年 ©️さくらももこ

人形制作に2ヵ月! 本展でしか観られない新作コマ撮りアニメ

 本展でしか観ることのできない、新作のコマ撮りアニメ「コジコジと次郎の不毛な会話」も見どころのひとつです。NHKキャラクター「どーもくん」や「リラックマとカオルさん」で知られるアニメ制作スタジオ・dwarf(ドワーフ)の木梨綾乃さんが手がけました。

アニメ制作スタジオ・dwarfの木梨綾乃さん(左)と本展のプロデューサー・草刈大介さん(右)が、新作コマ撮りアニメを前に制作秘話を明かす。(中央)「コジコジと次郎の不毛な会話」©️さくらももこ/dwarf CV:あおきさやか(コジコジ役)、高乃麗(次郎役)

 これまで漫画や2Dアニメで展開されてきたコジコジの世界を、立体で表現するのは初めて。草刈プロデューサーから「何もないところから3Dアニメを生み出すために、まずどうしたんですか?」と問われた木梨さんは「選りすぐりの人形をつくろうと思いました」とコメント。さくらプロダクションの監修を受けながら、人形制作だけで2ヵ月の期間を要したエピソードを紹介しました。

「コジコジと次郎の不毛な会話」に用いられた人形

 より緻密なモーションが可能になる3Dアニメにおいて、何を手がかりに動きをつけていったのか──。この問いに、「アニメーターの脳内にあるイメージと、既存の2Dアニメを参考にさせてもらいました」と答える木梨さん。とはいえ、コジコジの世界を「なぞる」だけに終始しないのがプロの仕事。コジコジの世界にオリジナリティを加えて再構築しようと「原作からあらゆる要素を抜き出したところ、両者の“噛み合わない会話”に結実しました」とコンセプトを披露します。さらに「最初は不毛な会話をループさせようとしたんですが、メルヘンな世界観を尊重したく、”まほう“の練習や星空でラストを迎える展開に変更しました」と明かしました。

充実のグッズにカフェメニュー、子どもが楽しめる関連イベントも

 展覧会グッズとカフェメニューの充実も、コジコジファンにとって嬉しいポイントでしょう。館内のPLAY! SHOPは会期中、「メルヘン通り商店街」として数多くのグッズを販売しています。特筆すべきは、全30柄の「小ぶりの湯のみ」。コジコジはもちろん、クラスメイトのペロちゃんを想って沸騰するやかん君などお茶に関するシーンを中心とした愛らしいイラストがプリントされています。数量限定で用意される「やかん君フィギュア」とセットで揃えても。

左:小ぶりの湯のみ 1,320円(税込)、右:やかん君フィギュア カメ吉茶屋のミニ風呂敷付き 9,900円(税込)

筆者の入手アイテム。上段:モヤモヤ問答サコッシュ 1,760円(税込)、下段左:コジコジ×DELFONICSジッパーケース 770円(税込)、下段右:コジコジ問答集マスキングテープ 715円(税込) (マスキングテープを除く写真:PLAY! MUSEUM提供)

 館内のPLAY! CAFEは、茶の道を追求するカメの精・カメ吉が夢見る「カメ吉茶屋」に様変わり。さくらさんの出身地・静岡県産の緑茶と甘味が楽しめる「日本茶セット」や、ハッシュドビーフの上に薄焼き卵でコジコジの顔をあしらった「コジコジかおプレート」など、作品世界をイメージしたドリンクやフードが提供されています。

左:カメ吉茶屋 日本茶セット 豆皿付き 1,800円(税込)、右:コジコジかおプレート サラダ付き 1,800円(税込)

 階上のPLAY! PARKでは本展の関連企画として、ふくわらいの精・おかめちゃんが鉛筆を“飼育”する「おかめちゃんの問答えんぴつ飼育場」が展開されています。好みの顔を色画用紙でつくり、持ち手の先に取りつけたら……ぜひプランターの土の中に植えてみて。図画工作が好きな子どもなら、誰でも楽しめそうな取り組みです。

おかめちゃんに倣って、オリジナルの「問答えんぴつ」をつくってみましょう。植えたら他の来場者が植えたいろんな顔のえんぴつを観察してみて

 サイン集めが趣味のゲランに向けた「ゲランがほしくなるサインをつくろう」といった体験企画も。有名人気分でサインしたら、ぜひ壁面に飾ってみましょう。ゲランのお眼鏡に叶うとよいですね! また毎日14時〜14時30分には、布製のユニークな遊具が並ぶ巨大な楕円形フィールドにブーブークッションが登場。特別なパワーのある「コジコジのオナラ」に倣ってクッションをお尻で鳴らし、家族や友人と笑い合ってみては? きっと和やかな時間になるはずです。

「会期が終わるまでに、壁一面を来場者のサインでいっぱいにしたい」とは、PLAY! PARKスタッフの談。添えてあるイラストが一人ひとり異なっており味わい深く、じっくり眺めると時間があっという間に経つ

コジコジのオナラは「しあわせのまほう」と呼ばれ、読者に愛されています(写真:PLAY! MUSEUM提供)