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「戦国日本の軍事革命」鉄炮で戦闘はどう変わったか 田中大喜が選ぶ注目の新書2点

「戦国日本の軍事革命」

 「鉄炮(てっぽう)の伝来が戦国時代を終わらせた」というフレーズはよく耳にするが、それはいったいどのような実態を表すのか。藤田達生『戦国日本の軍事革命』(中公新書・924円)はこの問いに正面から答える。

 鉄炮が戦争を質・量ともに劇的に変化させ、兵站(へいたん)と軍役を支える石高制検地にもとづく新たな軍隊を創出し、強固な分権体制をわずかな期間に強力な集権国家へと変貌(へんぼう)させたという。鉄炮の組織的な大量使用を実現した織田信長がこの流れを主導したとも説き、近年の研究では影を潜めつつあった信長の「革新性」を強調する点も本書の特色。
★藤田達生 中公新書・924円 

「国衆(くにしゅう) 戦国時代のもう一つの主役」

 黒田基樹『国衆(くにしゅう) 戦国時代のもう一つの主役』(平凡社新書・968円)は、2016年の大河ドラマ「真田丸」で市民権を得た「国衆」について、戦国大名との異同を軸に、その概念と具体的な存在形態・動向を説く。
 国衆は戦国大名と同じく領国を独自に統治する自立的な領主権力だったが、政治的・軍事的に独立して存在することができなかったがゆえに戦国大名に従属し、その政治動向と抗争を規定した。国衆こそが戦国時代の主役という本書の主張は明快であり、国衆概念を提唱し研究をリードしてきた著者の面目躍如の一冊である。=朝日新聞2022年4月30日掲載
★黒田基樹 平凡社新書・968円