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「くらべるえほん たべもの」ほか子どもにオススメの3冊 背景の物語まで見えてきそう

「くらべるえほん たべもの」

 並んだふたつの食べものを、じっとよく見て。「なにが ちがう?」「どこが ちがう?」まちがいさがしの写真絵本? いえ、単純に答えを求める本ではありません。そして写真ではなく、絵なのです。じっくり比べて観察し、何がどう違うのか、どうしてなのかを考えて。葉物野菜の透明度や果実の断面の違い、同じに見えるたいやきやクリームソーダにも、意外な気づきや発見があるでしょう。

 村上春樹や湊かなえなど、文芸書の写実的な装画を多く手がけてきた作者。緻密(ちみつ)な絵にはふくみがあり、時間の経過や背景の物語をも感じさせます。見返しやカバー、裏表紙にもさりげない遊びが。見ること、観(み)ることの豊かなよろこびを伝える知識絵本です。(ちかつたけお作・絵、学研プラス、1430円、3歳から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「なかよしの犬はどこ?」

 知らない町に父親と引っ越してきたペニーは、庭にやってきた犬といっぱい遊んで寂しさを忘れる。どこの犬だろう? ペニーと父親は、買い物をしながら犬のことをたずねてまわる。こうして町の人たちと知り合いになったものの犬は結局見つからない。しょんぼり帰ってくると、お隣からあの犬と男の子がひょっこり顔を出した。寂しさを抱える子どもが友だちを得るという展開に共感できる絵本。町の人々の肌の色、ペニーのおもちゃ、父子家庭の有りようなどいろいろな意味でステレオタイプを打ち破っている絵も楽しい。(エミリー・サットン作・絵、のざわかおり訳、徳間書店、1870円、3歳から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「18枚のポートレイト 柏葉幸子小品集」

 一編はほんの短い物語。でもその中に、きっと私たちの身近に潜んでいるであろう不思議が生き生きと描かれている。震災がテーマの立ち止まって考えさせられるものもあれば、不思議って本当におもしろい!と思わず声をあげたものまで、とにかくバラエティーに富んでいる。のびやかで飄々(ひょうひょう)としていて書き手が思い切り楽しんでいることが伝わってくる。日常の延長線上にある不思議は、当たり前のように自分のそばに存在していることがなんだか心強く、心地よい。(柏葉幸子著、植田たてり絵、理論社、1430円、小学校高学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2022年4月30日掲載