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「一字一句おろそかにせず」鷗外、自作に太鼓判 直筆の広告文、出版社倉庫で発見

鷗外直筆の広告文原稿(下)と、(左上から右へ)あわせて見つかったメモ、原稿が入っていた封筒、広告文が掲載された「新小説」

 文豪・森鷗外(1862~1922)が著作のPRのために自ら書いた広告文の直筆原稿が見つかった。今年は鷗外の没後100年にあたり、命日の7月9日を前に今月7日、出版社の春陽堂書店(東京都中央区)が発表した。

 広告文は鷗外が晩年に執筆した史伝「渋江抽斎」「伊沢蘭軒」「北条霞亭」の3作を紹介する内容。2枚をつなぎ合わせた和紙に墨で書かれ、末尾には「一ノ浮泛(ふはん)ノ字句ナキハ著者ノ敢(あえ)テ自(みずか)ラ保証スル所ナリ」(一字一句おろそかにしていないことは、著者である私が自信をもって保証するものである)と記されている。

 3作は1916~21年に新聞連載などの形で発表された。広告文は鷗外没後の22年8月刊行の文芸誌「新小説」臨時増刊に掲載されたもので、岩波書店刊の鷗外全集にも収録されている。

 直筆原稿は今年5月、春陽堂書店の都内の倉庫から見つかり、鷗外の研究者で森鷗外記念館(島根県津和野町)館長を務める山崎一穎(かずひで)・跡見学園理事長が鷗外の直筆と確認した。山崎理事長は広告文について「作品に対する鷗外の思いが噴き出している」と述べ、文面を直した跡からは「鷗外が筆を止めて考えながら書いていたこともうかがえる」と話している。

 山崎理事長による詳細な解説は、会員制文芸マガジン「Web新小説」の7月8日臨時増刊「鷗外特集」に掲載されている。(田中瞳子)=朝日新聞2022年7月13日掲載