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二次創作やモノマネなどの心理を鮮やかに読み解く『「推し」の科学』 佐藤健太郎が選ぶ新書2点

『「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か』

 心の中で作り出した表象を、世界に投射することを「プロジェクション」と呼ぶ。いわば、心と現実を結ぶ作業だ。久保(川合)南海子『「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か』(集英社新書・946円)は、このプロジェクションをキーワードに、推し・二次創作・応援上映・モノマネなどなどに関わる心理を鮮やかに読み解いていく。特に研究と同人誌制作の類似性の話などは鋭く、思わず笑ってしまう。認知科学という分野の入門書でもあり、現代文化論でもあり、読みようによってはビジネスのヒントも多く含まれているだろう。理系・文系問わず「推し」たい一冊。
★久保(川合)南海子著 集英社新書・946円

『時計遺伝子 からだの中の「時間」の正体』

 バイオリズム、体内時計といった言葉を我々は気やすく使っているが、その正体は一体何なのか。実は体内には「時計遺伝子」と総称される遺伝子が存在しており、これらが働いてホルモンの放出量などが調整されている。『時計遺伝子 からだの中の「時間」の正体』(講談社ブルーバックス・1100円)は、この分野の第一人者である岡村均氏が、その発見から最新研究までを解説した一冊。時差ぼけや睡眠障害はもちろん、高血圧やがんなどにも時計遺伝子は深く関わっているという。植物や微生物に至るまでが時計遺伝子を持つというから、世界はまさに時計に満ちているのだ。
★岡村均著 講談社ブルーバックス・1100円=朝日新聞2022年10月8日掲載