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「リスボン」書評 18世紀の震災をいかに乗り越えたか

評者: 椹木野衣 / 朝⽇新聞掲載:2023年03月18日
リスボン災害からの都市再生 著者:大橋 竜太 出版社:彰国社 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784395321865
発売⽇: 2022/12/02
サイズ: 20cm/244,18p

「リスボン」 [著]大橋竜太

 2月の初めにトルコ南部シリアとの国境近くで発生した大地震は、いまだ被害の全容がつかめない。去る3月11日には東日本大震災から12年が経過してなお記憶は生々しい。今秋には関東大震災から数えてちょうど100年となる。地球が地球である限り避けがたい地震という現象について、文明史的な視点から考える時機とも受け取れる。
 いま地球とし文明史としたのは、かつて栄華を極めたポルトガルの首都リスボンが、18世紀に「3・11」に匹敵する巨大地震と大津波、その後に続く猛火で瓦礫(がれき)の山と化しているからだ。本書によると地震の被害はスペイン南部やアフリカ大陸の沿岸部に及び、津波の余波もブラジルやカナダにまで到達したという。
 その最大の被災地となったリスボンが新たな近代都市として再生の端緒につくまでの経過を、著者は旧勢力との決別や新たな統治と政策、具体的な都市計画や建築様式に焦点をあててまとめる。