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日本外交の方向性と可能性考える「ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか」 詫摩佳代が選ぶ新書2点 

『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦』

 ウクライナ戦争が長期化する中、日本外交の方向性と可能性を考えるための2冊を紹介する。高橋杉雄編著『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦』(文春新書・1045円)は、開戦の経緯を多角的に分析し、この戦争の「古さ」と「新しさ」を考察する。終結は簡単ではないと見通す一方、台湾海峡有事の場合などを考えても示唆に富むと指摘。そもそも戦争を始めさせない努力が肝要で、そのためには軍事的な抑止力強化が不可欠だとしている。
★高橋杉雄編著 文春新書・1045円

『災害の日本近代史』

 土田宏成『災害の日本近代史』(中公新書・902円)は、20世紀初頭の日本が数々の大規模災害を経験する中で体制を整備し、災害外交の重要性を認識していった経緯を解き明かす。災害支援には、被支援国との友好感情の創出・強化など、外交的な目的がしばしば込められてきた。著者は災害外交の限界も指摘しつつ、被災者への同情を示して支援することにはそれ自体に意味があると論じる。
★土田宏成著 中公新書・902円

 高橋氏は、外交とは対立する相手との調整というよりも、仲間を増やして抑止力を強化しながら、万一、抑止が失敗した際に自らを守れるよう、各国との関係を築いておく手段だと指摘する。日本の特異性を生かした外交が求められる中、そこに災害外交が果たしうる役割を考えさせられる。=朝日新聞2023年8月5日掲載