なんという直截(ちょくせつ)的なタイトルだろう。不謹慎だが、ちょっと笑ってしまった。
アウトドアにおける諸々(もろもろ)の危険に警鐘を鳴らす本は、これまでにもたくさん出ている。
類書では、死ぬ危険性について「最悪の場合死に至る可能性もある」「過去に死亡事故も起こっている」など、控えめに書かれることが多いが、本書では逆に「転倒して死ぬ」「風に飛ばされて死ぬ」「道に迷って死ぬ」「ダニに咬(か)まれて死ぬ」「助けようとして死ぬ」と、目次の段階から次々死んでいく。
私はよく海に遊びに行くし、かつては雪山も登っていたから、本書に書かれている危険については、重々承知していたつもりだ。行動時は十分気を付けており、「最悪の場合死に至る可能性もある」と言われても、それは確率的にとても低い話であって、自分は大丈夫だろうと高をくくっていた。
だが本書を読むと、今まで死ななかったのは単なる幸運に過ぎなかった気がしてくる。
「カタツムリやナメクジに触って死ぬ」「戻り流れで死ぬ」「初心者がSUP(サップ)(スタンドアップパドルボード)で死ぬ」など、これまで想定していなかった死に方も出てきて、実際に起こった事例の、具体的な場所や状況まで読まされると、ますます死にそうな気分。カタツムリやナメクジに触って死ぬなんて想像したこともなかった。さらに「疲れて死ぬ」「発病して死ぬ」などは、歳(とし)をとってまさに現実味が増してきている。
つまりこれは、あなたアウトドアで死なないと思っているかもしれないけど死ぬからね、と再三釘を刺す本なのだが、文章も短く、イラストもわかりやすくて、章立てもテンポがいいために、深刻な内容とは裏腹に、妙なおかしみがあるのだった。意図的なのか、普段本を読まない層に届けようとしてたまたまそうなったのか。いずれにしてもみなさん、アウトドアに出かけるときは十分気をつけてください。ほんとに死ぬから。=朝日新聞2023年10月21日掲載
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山と渓谷社・1430円=3刷1万7千部。8月刊。「コロナ禍明けで遭難・水難事故が多発する中、ストレートなタイトルが、安全にアウトドアを楽しみたい層に響いたのでは」と担当者。