今月24日でロシアのウクライナ侵攻開始から丸4年になる。開戦当初、繰り返し配信される非人道的な光景に絶句する日々が続いた。それから1年半後、中東に世間の関心が集まるようになった。以来、凄惨(せいさん)なガザの姿に心を痛める一方、ブチャやマリウポリの惨事は忘れ去られてしまったのではないか……、という名状しがたい感覚にも襲われていた。
その中、侵攻直後に出版された本書が今も多くの人に読まれていると聞き、嬉(うれ)しく思い再び手に取ってみた。改めて感じたのは、表題通り、若者にも深く考えるきっかけを平易な文章で提供してくれていること。
ひしひしと伝わってくるのは、滲(にじ)み出る苦悩と誠実さ。そして、ウクライナという中小国の主体性を見逃さないという覚悟。ドイツ史家・藤原辰史さんの問題提起は切実で、侵攻直後にとうに先を見ていたことがわかる。①ロシアの蛮行を真に非難できるためにいかなる構えが必要か。②暴力を行動と表現で封じ込めるにはどうすべきか。③日本のような戦場から離れた国に住む人びとの当事者意識の減退と関心の低下にいかに向き合うか。ポーランド史家の小山哲さんは①②について、第2次大戦末期にポーランドの人びとが死の淵で得た教訓「生きのびるために名誉をかけて抵抗する。死ぬことが目的ではない」を引用。ナチに対する蜂起で死線を彷徨(さまよ)った人びとの声を蘇(よみがえ)らせるのだ。
③と関連して印象に残ったのは、プーチンの手口は彼に特有なのでなく欧州大国のパワーゲームの伝統的手法そのものであるとの指摘。これに則(のっと)って、軍事・安全保障面からプーチンを批判することに終始してしまえば、彼と同じ穴の貉(むじな)なのだという。誰でもプーチンになりうるのであり、決して他人事ではない。この警鐘を胸に刻みたい。=朝日新聞2026年2月21日掲載
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ミシマ社・1760円。22年6月刊、8刷2万2500部。担当者は「ウクライナ情勢の解決の糸口が見えず、トランプ米大統領就任後のこの1年でウクライナ関連ニュースが増えており、定期的に版を重ねている」。