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和田春樹さん「回想 市民運動の時代と歴史家 1967―1980」インタビュー 世界戦争終わらせるには

和田春樹さん

 「戦争が起きたら、止めるために声を上げるのが、武器を提供していない人間の役割だと思います。ウクライナ戦争は即時停戦すべきです」

 ロシア・ソ連史の専門家として、こう訴えてきた。本書は、研究を始めてからの十数年を振り返る。その時期を再検討することが、今後を考えるために必要だと思うからだ。

 ベトナム戦争が続く1967年、自宅の上空を米軍のヘリコプターが基地へ向かって飛んでいた。第一次大戦で攻撃命令を拒否したロシアの兵士について論文を書きながら、何もできなかった。30歳で大学助教授となった68年4月、キング牧師が暗殺される。「もう沈黙はできない、と時代に押し出されるようでした」。反戦のビラを作り、デモを始めた。

 研究方法も変わった。学会活動で問題を見つける形から、市民運動で直面した問題に触発されて考えるようになった。著書『ニコライ・ラッセル』は日露戦争で日本の捕虜となった兵士に工作した、ロシアの革命家の評伝だ。米軍兵にベトナム反戦を呼びかけた米国の活動家と重ねた。

 73年に韓国の政治家・金大中(キムデジュン)氏が拉致され、74年に詩人・金芝河(キムジハ)氏が死刑判決を受けると、民主化を支援する日韓連帯運動に力を注いだ。

 78年からはソ連に滞在した。文書館で史料を読み、体制に批判的な人々とも会った。「全く違う世界に見えたが、同じ人間としてつながっていた」。79年に帰国。80年5月の光州事件を前に、本書は終わる。

 題を「市民運動と歴史家」ではなく「市民運動の時代と歴史家」にした。

 「第一次大戦から始まった『世界戦争の時代』の中で出てきたのが、『市民運動の時代』です。市民運動が再び未来に対する構想を作り出さないと、世界戦争の時代は終わらない。この本の続きを書かなければと思います」(文・石田祐樹 写真・工藤隆太郎)=朝日新聞2024年2月24日掲載