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雑誌「ミネラ」 ブーム? 希少石のマニアックな世界

「ミネラ」

 ミネラは「もっと石が好きになる!」がキャッチフレーズの、鉱物コレクター向けの雑誌。実は私も石ころが好きで、家には拾ってきた石ころを収めたプラスチックケースが4箱ほどある。

 なので、気になる雑誌ではあったのだが、自分とは少し方向性が違う気がして、これまで手にとることはなかった。私が拾うのは、単に色や形がいいなと思っただけのそのへんの石ころで、水晶やヒスイや希少鉱物のような立派な石ではないからだ。

 それでも今回は、隕石(いんせき)の特集に興味が湧いて手にとってみた。隕石は石の業者やコレクターが集うミネラルショーなどでもたくさん売られていて、そんな簡単に手に入るのかと驚いた記憶がある。何しろ宇宙から来た石である。滅多に見つからないものと思っていた。

 ページをめくると、隕石をスライスしたときに現れるウィドマンシュテッテン構造の写真が載っていて、その緻密(ちみつ)でSF的な造形に魅了された。

 宇宙の匂いを嗅ぐことができる隕石もあるらしい。宇宙飛行士の言によれば、宇宙は焦げたブルーベリーの匂いがするそうだ。その匂い、ぜひ嗅いでみたい。

 「石拾い&ぶらり旅」という連載があったので読んでみる。自分も似たようなことをしているので親近感が湧く。最新号の目的は糸魚川で、有名なヒスイを探しに行った様子が書かれていた。私も同じ場所でヒスイを探したことがあり、見つけることはできなかったものの、糸魚川の海辺の石はどれも風合いがよかったことを覚えている。

 そのほか、川に黒曜石を拾いに行くとか、銅山のズリ(採掘で出た土砂、またはそれを捨ててある場所)で黄銅鉱を探すといった、山や川へ探石に出かけた話、海外の鉱物図鑑の紹介、古生物愛好家による化石の記事など、雑誌の作り自体は粗削りで、アカぬけているとは言い難いものの、石が好きな人には気になる話ばかり。職業ライターによる取材記事ではなく、専門家や好事家の寄稿で構成されているのも、素でマニアックな世界を覗(のぞ)き見ているようで好感を持った。

 ちなみに本文中で私が一番惹(ひ)かれた石は「石ころ夜話」に出てきたメノウだ。私が拾ってくる石ころもメノウが多い。宝石とまではいかないけれど、透明感があり模様や色彩が豊かで美しく、それが長い時間をかけて削られると、手になじんでいい感じだったりするのだ。

 残念ながらメノウを除き、この雑誌で、私が拾うような希少性のない普通の石ころが特集されることはなさそうだが、石を探すときに無心になる気持ちは同じだから、共感とともに読み切った。

 以前手にとったときに比べ内容が充実してきたように感じたのは、もしかして石ブームが来ている証(あかし)だろうか。=朝日新聞2024年3月2日掲載