音声でもインタビューを!
好書好日ポッドキャスト「本好きの昼休み」でも小泉今日子さんのインタビューをお聴き頂けます。以下の記事はポッドキャストを要約・編集したものです。
「ラジオと何が違うの?」から
――120回は1本平均約30分。日数にすると計丸2日半です。それと3冊の本が形になって残りました。改めてどんなお気持ちですか?
やっぱり、すごく面白い方達と貴重なお話ができたなと。番組として120本も作れたのはすごく良かったし、ポッドキャストなのでアーカイブはずっと残っていくので、これから初めて聴いてくださる方もまだいるということがすごく嬉しいなって感じですね。
コロナの中で立ち上げた番組だったので、先に対する不安とか、これからどう生きようとか、「自分にこんな時間が戻ってきた、戻そう」みたいな、そんなムードの中で始めた番組で。だとすると(番組終了で)その役割は少し終わって、次の場所に行って何かをまた始めるいいきっかけなのかなっていう気もします。
――小泉さんはラジオ番組も、10代の頃から本当に長いことやってましたけど。
はい、好きです。
――ラジオ番組って、放送が終わると消えてしまうようなところもありますけど、アーカイブとして残るポッドキャストは、ちょっと違った心構えだったんじゃないかと。
ポッドキャストって、どんなものかもあんまりよくわかってなかったんです。「ラジオと何が違うの?」みたいな、そんな質問から打ち合わせが始まった気がするんですけど。残していけるということなので、最初から残すという方法を、アイデアをいっぱい考えようと、最初から「書籍化をやりませんか」とか、音楽も既存の曲はかけられないので、「この番組のためにオリジナルとして新しい曲を作ったらかけられるの?」とか、その中でも新しいことを何ができるか、模索していたのはすごく楽しかったですね。楽しいチャレンジでした。
――そうでしたね。この番組のために作った曲も。
そう。私だからできる、ちょっと贅沢なことみたいなことを試していましたし、外に出ていく。本屋さんに実際行って取材させてもらうのもやっぱり楽しかったかな。
――ですよね。ラジオはスタジオで話すスタイルが主流かと思うんですけども、ポッドキャストはゲストのところに出かけて行って話すスタイルが多かったですよね。
そうですね、浦沢直樹さんの漫画を書いている仕事部屋とか、糸井さんの会社の、社員がいつも使っているロビーみたいな所だったりとか、あともちろん本屋さん、そういうところに伺って話した時に、そこに行かなかったら広がらないお話みたいなのも確実にあったという感触はあります。すごく見えるものを見て話したいという感じはあります。
――そうですね。本屋さんって店によって雰囲気も違うし品揃えも違うから。
それを伝えたかったから。なぜこのテーマで本屋さん始めたのっていうことが聞きたかったので、行けてよかったなと思って。
――誰をゲストに呼ぶかも、小泉さんが主導で考えてたんですか?
これに関しては収録の合間にみんなで情報を寄せ合ったりとか、プロデューサーとディレクターと私でグループLINEみたいのを持っていて、そこで「この人、気になります」「あの人すごい面白かった」「この本すごい面白かった」みたいなやり取りをして、それで決めてました。
――絶対呼びたくて、オファーをOKしてくれて良かった人は?
もう全員そうです。唯一、内田也哉子さんだけ2回出てもらってるんですけど、それは也哉子さんが樹木希林さんから受け継いだ「9月1日」っていうバトンがあって。だから9月にはもう1回呼ぼうとか、そういうこともできたりして。
対話で広がる世界と言葉
――今回の本は「ナラティブ」というテーマでした。
ナラティブっていう言葉自体、私もあんまり馴染みがなかったんですよ。
1日中たくさんの媒体の人に次から次へと取材される日があるんです。いろんなライターやインタビュアーの方が来ていろんな質問をしてくれるんですよね。(中略)1日を終えて帰ったあとには小さかった世界が結構広がってて、自分の言葉自体も広がってて、「やっぱり人に聞かれないと改めて言葉にしないんだな」「しようと思ってなかったことまで言葉になっていくんだな」と。――『ホントのコイズミさん NARRATIVE』より
――そうか、この番組自体がナラティブだったのかと。
そうですね、そう思います。
――いろんな人と対話する番組だったので、それによって逆に小泉さん自身の世界もどんどん広がっていった。
本当にそうなんですね。私たちはリスナーの方とか読者の方々のその扉を開いて、少し世界が広くなるということを目指して作ってるんだけれど、同時に私は私で、世界がどんどんこの2年半広がったっていうのが、ありがとうって感じですね。本もそうですし、実際、書店の人とかと一緒にいくつかお仕事したりとか。
――別のお仕事にも広がっていく?
そうなんですよ。仲間が増えた感じがありますね。同じ意志を持って何かができる仲間増えたという感じがして、本当にいつかみんなで集まってブックフェアとかやりたいですね。
――やりたいですね!
ほら、仲間がまた増えた(笑)。みんなが集まれば少し大きくできるんじゃないかとか。そんな風に考えますよね。朗読したり、音楽奏でたり、何か体験できるとか、そんなこともありながらみんなに(本を)広めるみたいな。書店さん同士が実はすごく仲が良くて、手をつないで一緒にイベントしたり、相談に乗ったりとかっていうのを、今回この番組やりながらすごいたくさん見てたので、意外と連帯するのは難しくなさそう。
――本の業界って、それぞれライバルなんだけど、本を読んでくれるような、もっと本を読める世の中にしようというモチベーションは一緒で、わりと協力しあったりすることが結構あるんですよね。
ちょっと前に京都の本のイベントに参加した時も、やっぱり同じように本を手に取って欲しいって思ってくれてるみたいな話をきいて。本にまつわる人たちは結局、同じ方向を向いるっていう感じがしました。
本を読まない人にどう読んでもらえるか
――ポッドキャストと本って、すごく相性がいいなって思いませんでした?
そう思いますね。本と同じで、好きな時に好きな時間、たった一人で楽しめるものでもあるという感じで。電車の中で本を広げるのか、イヤホンをするのか、似てる時間かもって思ったりします。
――動画よりも音声の方が相性がいいのは、絵がないじゃないですか。だから頭の中で想像しながら聞くっていうのが結構本と共通してる。
そう。音声コンテンツの良い所って、家で私も掃除したりとかお料理作ったりするんだけど、ながら聞ける。映像をつけちゃうとサボっちゃうんです。行動が、動きが止まっちゃうから、そういう時にもいいなって思ったりもする。
――本をテーマに語るっていう意味ではすごく音声ってありだと思いますが、今後はそういう活動はしていきませんか?
私なんかは本が好きだし、本が好きな人って、本を読むという行為がずっと一生好きだと思うんですよ。そうじゃない人たち、本を読むのが苦手だという人もたくさんいたりするから、今度は例えばオーディオブック的なもの、本を声で読むとか、朗読をうちの舞台でも時々やりますけど、そういうのを入り口にして物語を楽しんでもらうみたいなことも、私にはできることかなって最近考えてます。
――本の伝道師として「ホントのコイズミさん第2章」ですね。
選挙と一緒で、投票に行かない人をどう取り込むかっていう感覚じゃないですか。本を読まない人にどう楽しんでもらえるか。音で聞くのは得意な人が聞いてくれたら「その本買ってみようかな」って。物語をあらかじめ知ってたら本を開くのが怖くないし億劫じゃない。それを確認していくみたいな入り口もあるかもって思ったりします。私だけじゃなくて、いろんな人と企画できたらいいなと思います。
【好書好日の記事から】
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