【この記事で紹介する絵本】
- いつもの遊びからはじまるファンタジー『どーん、じゃんけんぽん!』
- 小さな姉妹の心はずむ夜の時間『まよなかのかいじゅう』
- がさっ、ごそごそごそ……だれ?『くまくんです。』
- どきどき楽しい、いっちゃんの夜のお話3つ。『こどもべやのよる』
- バトンを渡すのは誰?『じゅんばん じゅんばん じゅんばんですよ』
- らっこなんて……よんでないよ!『だっこだっこらっこ』
- 最後のポイントは、おかずたちの思いやり!? 『おかずたちのおでかけ』
- 新しい人生を歩みだす2人に…『ねえ、おぼえてる?』
- すっかり大きくなったおまえは……『わすれていいから』
- ぼうしと一冊の本を手に。『きみは、ぼうけんか』
いつもの遊びからはじまるファンタジー『どーん、じゃんけんぽん!』
丸太の上をまっすぐ進んで、出会ったらじゃんけん。勝ったら進む、負けたらおりる。公園でかんちゃんとゆいちゃんは、大好きな遊び「どーん、じゃんけん」をすることに。「よーい、どん!」かんちゃんのかけ声で、二人は反対方向に向かって出発です。生い茂った葉っぱをよけると向こうからやってきたのは……おや? いつもの公園ではじまった遊びは、気がつけば次々と動物たちに出会うファンタジーの世界へ。
【編集長のおすすめポイント】
ふだん何気なく子どもたちの姿を見ていると、その真剣に遊ぶ姿や表情に驚かされることがあります。好奇心や想像力を惜しげもなく使って挑む彼らの目の先には、どんな世界が広がっているのでしょう。ひがしさんの絵本を開くと、かつて自分たちも夢中になった、あの瞬間の景色を味わうことができるのです。子どもたちが読めば、それはきっと日常の時間の続きなのでしょうね。「遊ぶ」ことの喜びや奥深さを改めて感じさせてくれる一冊です。
小さな姉妹の心はずむ夜の時間『まよなかのかいじゅう』
「ごおー ぷすー ごおー ぷすー」真夜中、ものすごい音が聞こえて目が覚めたれいちゃん。あやちゃんを起こして2階へ確かめに行くことに。懐中電灯で奥をそうっと照らすと……ベッドの上に眠っていたのは、山のように大きなかいじゅう! 極彩色に彩られた心はずむ夜の時間を描き出します。
【編集長のおすすめポイント】
大きなトンネルに、ものすごい鼻息。くちびるをめくれば、そこは大きな底なしの穴。ぼよんぼよんした地面だって、じっとしているわけではありません。大きなかいじゅうに全身を預けながら、隅々まで調べ上げ、その面白さを体感していく姉妹の姿の愛らしいこと!恐れを知らないふたりは、それこそ「ちいさなかいじゅうたち」ですよね。最後はおかあさんの視点もちょっぴり入って……一家総出で楽しめる一冊になっています。
がさっ、ごそごそごそ……だれ?『くまくんです。』
冬眠から目を覚まし、巣穴からとびだしていくのは、くまくん。フキノトウやイタドリをむしゃむしゃ食べ、木に登ってブナの若葉を食べ、サルナシやドングリ、ヤマブドウも食べます。キイチゴに夢中になっていると、ふとお母さんがいないことに気がついたくまくん。今日からは自分で食べ物を探さなくてはなりません。ひとりで暮らしていく日がやってきたのです……。
【編集長のおすすめポイント】
草むらからがさっと音がして、きょとんとこちらを見ているくまくん。このとっても愛らしい表紙の絵は、作者の村上さんが川で釣りをしている時に、実際にツキノワグマの子に出会った時のイメージから描かれているのだそう。くまくんは、さぞかしドッキリしたのでしょうね。けれど絵本を読んでいればわかります。くまくんたちは、この健やかで大きな山に見守られ、すくすくと成長してくのです。そうやって自分の生きる道を見つけていくのでしょう。私たち大人も、子どもたちを大きな気持ちで見守りながら、エールを送ることができたらいいですよね。
どきどき楽しい、いっちゃんの夜のお話3つ。『こどもべやのよる』
こどもべやに夜がきました。まーちゃんもみっちゃんもよーちゃんも、すやすや夢の中。起きているのはいっちゃんだけ。いっちゃんは、まっくろにのみこまれないように、頭まですっぽり布団をかぶります。じっと息をひそめるいっちゃんでしたが……。「こどもべや」を舞台にした4姉妹のとっておきのお話3つ。
【編集長のおすすめポイント】
1つの部屋に2段ベッドがふたつ。ぎゅっとしたところで泣いたり、笑ったり、怒ったり、冒険の準備まで。そんな様子を見ていると、うらやましくてたまらない気持ちになってきます。だって、とても楽しそうですもの。憧れと懐かしさを同時に抱かせるこの絵本。今回の主人公はいっちゃんですけれど、4姉妹それぞれ違う物語が広がっているはず。いつか、そちらものぞいてみたくなりますね。
バトンを渡すのは誰?『じゅんばん じゅんばん じゅんばんですよ』
やさしい風が吹いてきて、ひらりと散った桜の花びら。その花びらがそっと触れたのは葉っぱの上のさなぎ。さなぎはやがてちょうちょとなり、たんぽぽの綿毛にすっとおり……。「じゅんばん じゅんばん じゅんばんですよ」どこからか聞こえてくる、呼びかけの言葉のくりかえし。まるで絵本に登場する生き物たちが順番にバトンを渡し、季節をリレーしているようです。
【編集長のおすすめポイント】
この絵本を読んでいる今は、どんな季節? どんな生き物たちが活躍して、どんな花が咲いている? 空の色は? 風は吹いている? 今の季節は好き? それとも苦手? 絵本と全く同じ景色が見つけられなかったとしても、なんだか身の回りにある小さな瞬間を探しにいきたくなってくるのです。
らっこなんて……よんでないよ!『だっこだっこらっこ』
「ママ、だっこーー!」
大きな声でさけんだら、やってきたのは……らっこ?らっこなんて、よんでないよー。
「だっこ だっこー だっこーー!」
あらら、またまた。すると今度やってきたのは!?
【編集長のおすすめポイント】
「だっこ」がテーマのふんわり優しい赤ちゃん絵本かなと思って読んでみると、その展開にびっくり! 思わずクスクスッと笑ってしまうような言葉遊びの面白さ。それがこの絵本の魅力です。毎日を必死で生きている赤ちゃんや小さな子どもたちにだって、こんな風に肩の力を抜いてくれるような絵本が必要なのかもしれませんよね。親の気持ちにも、子どもの気持ちにも寄り添ってくれる、あたたかな一冊です。
最後のポイントは、おかずたちの思いやり!? 『おかずたちのおでかけ』
今日はおかずたちみんなでおでかけです。駅のホームできかんしゃを待っていると、チキンライスちゃんがちょっと寒そう。「はい、これを着てください」たまごやきさんは、たまごのカーディガンをチキンライスちゃんにかけてあげます。とってもお似合い。すると今度は……?
【編集長のおすすめポイント】
それぞれの思いやりと親切な行動によって、ちょっとずつパワーアップしていく。そのやり取りがこの絵本の大きなみどころです。だって、ワンポイント加わることで、大好きなお子さまランチが完成していくのです! 自分のために仲良くきかんしゃに乗ってやってきた……なんて想像したら、大人だって嬉しくなっちゃいますよね。
新しい人生を歩みだす2人に…『ねえ、おぼえてる?』
ねえ、おぼえてる? パパと3人でピクニックに行ったときのこと。誕生日にパパがくれた自転車にまたがって走り出したあと、支えていたママの手がはなれたとたんに転んだこと。それから……。今も決して揺らぐことのない、あの朝の記憶。新しい人生を歩みはじめる2人をてらす朝の光が優しく包みこみます。
【編集長のおすすめポイント】
大人になっても、ふと思い出す子どもの頃の記憶。それは切り取られた一瞬の景色だったり、誰かとの会話だったり。音楽やにおいをきっかけに思い出すこともあれば、悔しさや悲しさなどの感情を思い出すこともある。ぼんやりした記憶のこともあれば、まるで昨日のことのように思い出せる場面もある。そんな風にさまざまな形をしている記憶を、もし誰かと一緒に共有できたなら。絵本の可能性を広げ続けるシドニー・スミスの作品を堪能できる一冊です。
すっかり大きくなったおまえは……『わすれていいから』
はじめておれがこの家にきたとき、生まれたばかりのおまえがいた。ここは、おれたちのなわばり。おれがどんどん大きくなって、おまえはゆっくり大きくなった。お気に入りの場所も、遊びも、ご飯の時間も一緒。嬉しい時も、悲しい時も、おれはそばにいる。おまえは少しずつ家にいないことが多くなって、すっかり大きくなった頃……。すべての旅立ちを応援する、ある少年と猫の物語。
【編集長のおすすめポイント】
あんなに小さな赤ちゃんだったのに、はいはいをし、立ち上がり、やがていたずらをしたり、一人前のご飯だって食べられるようになっていく。泣いていれば心配をするし、間違えれば教えてあげたくなる。こんなに心をくだいてきた我が子が今まさに旅立とうとしている。そんな時、親としての自分はなにをしてあげられるんだろうか。大事な答えを、猫が自らの背中で見せてくれているかのようです。
ぼうしと一冊の本を手に。『きみは、ぼうけんか』
めちゃくちゃになった部屋、壊されてしまったわたしたちのおうち、どうしたらいいのか、全然わからない。でもお兄ちゃんは自分のぼうしをわたしの頭にのせて言った。「ぼうけんかになりたくない?」 こうして二人は「ぼうけん」の旅に出る……。イラン発の平和を考える絵本。
【編集長のおすすめポイント】
今を生きる子どもたちにとっても決して他人事ではない、戦争という過酷な現実。恐怖や絶望に直面した時に、この想像力や遊び心で立ち向かった小さな冒険家たちのことを思い出すことができたなら。この絵本が、きっと多くの人の心を励まし、希望を持ち続けることの大切さを教えてくれる存在になっていくのではないでしょうか。
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