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「選挙との対話」/「日本の分断はどこにあるのか」書評 「ともに語らう」出発点のために

評者: 藤田結子 / 朝⽇新聞掲載:2024年11月09日
選挙との対話 著者:荻上 チキ 出版社:青弓社 ジャンル:政治

ISBN: 9784787235466
発売⽇: 2024/10/07
サイズ: 1.5×14.8cm/180p

日本の分断はどこにあるのか: スマートニュース・メディア価値観全国調査から検証する 著者:池田 謙一 出版社:勁草書房 ジャンル:政治

ISBN: 9784326603756
発売⽇: 2024/10/16
サイズ: 1.7×21cm/304p

「選挙との対話」 [編著]荻上チキ [著]飯田健、秦正樹、大村華子ほか/「日本の分断はどこにあるのか」 [編著]池田謙一、前田幸男、山脇岳志

 トランプ氏再選に沸いた米大統領選。一方、日本の衆院選は盛り上がりに欠け、投票率は戦後3番目に低かった。そんな日本の有権者に向け、選挙についてともに語らう出発点にと編まれた一冊が『選挙との対話』だ。
 なぜ自民党は選挙に強いのか?選挙制度は自民党の一党優位にどう影響しているのか?なぜ野党は勝てないのか?といった疑問に対して、本書は学術調査を基に、わかりやすく答えてくれる。
 なるほどと思ったのは、左右イデオロギーと世代に関する分析だ。高齢世代は立憲民主党を左寄り、日本維新の会を右寄りと見ている。他方、20代は両者にほとんど差を見出(みいだ)せず、中道的と位置づけているという。
 投票に関する分析も興味深い。アメリカでは、共和党支持者は民主党政権の経済政策を過度に低く評価する。民主党支持者も共和党には低評価。しかし、日本では党派性の影響もあるけれど、経済評価が政府の支持や現職への投票を決めている。日本の有権者は実はよくやっている、というのだ。要するに、日本ではアメリカほど深刻な分極化が起こっていない。
 学術的な知見をもっと詳しく知りたい読者には、『日本の分断はどこにあるのか』が役立つ。たとえば「移民受け入れ」について。アメリカの民主党支持者と共和党支持者の態度には極端な差がみられる。一方で、日本のリベラル層と保守層の差はそこまで大きくない。そして、アメリカの共和党支持者は「マスメディアへの信頼」が大変低い。日本では、約7割の人が新聞やテレビを信頼し、リベラル層と保守層に差はほぼ見られないという。
 ところで、そのメディアは現実の政治を伝えてきたのだろうか。なぜ若者は投票に行かないの?とテレビは話題にするけれど、お前がいうな案件ってやつだ。学校も教えない。誰がそんな社会にしたのだろう。ともに政治を語らうきっかけに、この2冊を手に取ってみてはいかがでしょう。
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おぎうえ・ちき 評論家▽いけだ・けんいち 同志社大教授。まえだ・ゆきお 東京大教授。やまわき・たけし スマートニュース メディア研究所所長。