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〈オススメ〉村上しほり「神戸 戦災と震災」

 阪神・淡路大震災から17日で30年。本書は1868年の神戸港開港を起点に、1938年の阪神大水害、45年の神戸大空襲、95年の震災を克服した神戸の歩みを、記録をもとに都市計画と市民生活の両面から描き出す。

 大空襲では市街地の6割以上が焼け野原になった。50年後の震災で大きな被害を受けたのは、戦災を免れた地域だった。

 火災の延焼で甚大な被害を受けた新長田駅南地区では、震災のわずか2カ月後に再開発の都市計画が決定された。数十棟の再開発ビルが建ち、最後の1棟が昨秋完成した。30年という時の流れが行政と住民の合意形成の難しさを感じさせる。

 著者は10歳から神戸で育った都市史の研究者で、市の公文書専門職。記録を直視し、伝承することの重要性が淡々とした筆致ににじんでいる。=ちくま新書・1320円(伊藤宏樹)=朝日新聞2025年1月18日掲載