評者: 酒井正
/ 朝⽇新聞掲載:2025年02月15日

難民に冷たい国? ニッポン:支援と審査の現場から
著者:柳瀬房子
出版社:慶應義塾大学出版会
ジャンル:社会学
ISBN: 9784766429688
発売⽇: 2024/12/10
サイズ: 18.8×2cm/336p
「難民に冷たい国? ニッポン」 [著]柳瀬房子
日本は難民の受け入れ数が極めて少ないとされるが、NPOで難民支援に40年以上携わり、難民審査参与員も務めてきた本書の著者は、そもそも難民に該当する可能性が全くない申請者がいる実態を指摘する。日本に入国している外国人が在留資格を失うことを回避するためだけに難民申請し、審査の際にそれを公言してはばからない例も過去にはあったという。
だが、著者は日本の難民受け入れに問題がないと考えているわけではない。それどころか、日本は難民に対する支援体制が不足しており、ホンモノの難民に選ばれない国になってしまっていることを憂慮する。本書は、あまり知られていない難民認定の現実を垣間見させてくれる一方で、難民の問題を認定審査のみの課題とは捉えずに、外国人に関する制度や社会全体の問題として考えようという姿勢を貫く。
現在、外国人労働者を巡る政策は大きく動いているが、今後、日本の難民受け入れも変わることができるのだろうか。本書は、この問題を考える最良の入門書になっている。