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西崎伸彦さん「バブル兄弟」に大宅壮一賞 時代の寵児たちの栄光と挫折

大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「バブル兄弟」著者の西崎伸彦さん

 第56回大宅壮一ノンフィクション賞の贈呈式が6月、東京都内で開かれた。バブル経済期を生きた兄弟2人の栄光と挫折を描いた受賞作「バブル兄弟 “五輪を喰(く)った兄”高橋治之と“長銀を潰した弟”高橋治則」の著者の西崎伸彦さん=写真=は、受賞のあいさつで「人の行く裏に道あり花の山」という投資の格言に触れながら記者一筋の道を振り返り、「いくつもの幸運に恵まれ、活路が開けた」との言葉を寄せた。

 受賞作は「スポーツマーケティングの第一人者」と呼ばれた兄と「バブルの寵児(ちょうじ)」と呼ばれた弟が、やがて司直の手に落ち、活路を模索するさまを描く。

 元電通専務で東京五輪・パラリンピック大会組織委員会理事を務めた兄の高橋治之被告=収賄罪で公判中=を直接取材。日本長期信用銀行(長銀)破綻(はたん)につながる東京協和信用組合の乱脈融資事件で背任罪に問われた弟の高橋治則氏=故人=を20年以上取材した成果も盛り込んだ。

 西崎さんは週刊ポストや週刊文春の記者を経て独立し、フリーで取材・執筆を続ける。四半世紀まえに飛び込んだ週刊誌の世界を振り返り、「来週は大きなネタが見つかる、もう少し続けたら面白い人に会える、という諦めの悪さ」が原動力だったという。

 贈呈式で選考委員のノンフィクション作家・石井妙子さんは「点と点がつながり、やがて線になり網になる。読みながら1枚のタペストリーが見えてくる醍醐味を味わえる」と評した。(大内悟史)=朝日新聞2025年7月2日掲載