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ゆとたわ(かりん&ほのか)ポッドキャスト書籍化インタビュー OLの本音を語り尽くして8年目の現在地

(左から)かりんさんとほのかさん=篠塚ようこ撮影

コロナ禍を経て変化したこと、変わらないもの

――はじめに、お二人が2017年クリスマスにポッドキャスト番組「ゆとたわ(ゆとりっ娘たちのたわごと)」を始めたきっかけを教えてください。

かりん:大学時代に通っていた就活塾が同じで、ほのちゃんからエレベーターで話しかけてもらったことをきっかけに話すようになりました。

 転機となったのが、新潟旅行です。今振り返ると、私が当時交際していた彼氏と別れたばかりなこともあって、誰かと喋りたかったんですよ。それで、ほのちゃんに「旅行に行かない?」と誘ったら、二つ返事で「いいよ」とOKをしてくれて、鈍行列車で新潟まで行くことになりました。

ほのか:当時は特別親しいわけではなかったし、なんで新潟だったのか、鈍行にしたのかも一切覚えていないんだけどね(笑)。

かりん:ね(笑)。それで、長時間の移動でも会話が途絶えなくて……。そのときから「喋りやすい子だな」と感じていたんですけど、旅行の直後にほのちゃんが「ポッドキャストをやらない?」と誘ってくれて。「私もちょうどやりたかった!」と翌日お返事を……。

ほのか:ううん、当日中に「やる!」って返事をくれたよ。

かりん:そうだった(笑)。それで、すぐにポッドキャストに登録したんだよね。当時は申請も英語で手続きをしなければならなかったので、サーバーを借りるところから始めて。翻訳をしながら、なんとか配信できるようになったのが2017年のクリスマスでした。今は週に1回集まって収録をしています。

――当時はポッドキャストが今ほど人気というわけではなかった印象です。さまざまな情報発信ツールがある中で、なぜポッドキャストを選んだのでしょうか?

かりん:当時から2人とも日常的にポッドキャストやラジオを聞いていたんです。

ほのか:昔から個人の方のブログを見るのがすごく好きで、 当時も個人の感想や日常を自由な長さで語れる日記のようなコンテンツにハマっていて。「“音”を通して自由に喋るコンテンツなら、聴き心地も良い。寝る前にもぴったりかもしれない」という考えからポッドキャストを選びました。

かりん:ラジオと違って、ポッドキャストは一般の人でもできるというハードルの低さも良かったよね。

――お二人の雰囲気は番組開始当初からずっと変わらないですよね。一方で、長く続けているからこその変化もあったと思います。「ここは変わった」「ここは変えた」といったポイントはありますか?

かりん:たしかに、会話のテンポ感はずっと変わらないですね。大きく変わった点として挙げられるのは内容かな。コロナ禍で自分自身を見つめる時期を経て、考えていること、感じていることを共有し、対話する機会が増えました。それまではソーサー(※「ゆとたわ」のリスナー名)からのお便りに答えたり、お互いの誕生日を祝ったりしていた、いわゆる“企画系”ポッドキャストだったのが、コロナ禍で内省を深めて、思想について話す内容に変わったんです。

ほのか:振り返ると、コロナ禍でさまざまなことに対して解放モードになったよね。「ゆとたわ」で今ではテーマの中心となっている映画やドラマ、本に関する感想を話すようになったのもその頃です。実は、当時は感想を言うことに少し抵抗があったんです。何か間違ったことを言ってしまうんじゃないか、と思ったりして。

かりん:世の中には映画批評家の方がたくさんいて、感想を話すコンテンツもレッドオーシャンの世界で私たち一般人が喋るわけだからね。当初は興味を持ってくれる人はいるのだろうか……と思っていたけど、等身大で感想を喋ったら反応が良くて嬉しかったです。

書籍は“本当の自分”を知っていく過程

――書籍化はどのように決まったのでしょうか?

かりん:本が好きなので、もともと「どこかのタイミングで本を出せたらいいな……」とぼんやり考えていたんです。そんな中、編集者の野本さんからお声がけいただいて。実は野本さんもソーサーで、世代が近いこともあって「この人と一緒に本を作っていきたい」と感じて、お受けしました。

ほのか:お話をいただいた当初は嬉しかったですし、あまり深く考えずにお受けしたんですけど、自分たちの会話を改めて振り返ると、本当の“雑談”なので、読み物としてどう見せるか、章立てや構成に苦戦しました。私たちのテンポ感を残すために会話形式を中心としながらコラムを書いたり、ポッドキャストを聞いたことがない方にも伝わるように注釈を入れたり、いろいろと工夫しましたね。

――お二人の会話が文字として収録されると、声とは受け取り方も変わるかなと感じたのですが、完成した書籍を読んでいかがでしたか?

かりん:出来上がった書籍を読み返して、自分の歴史が詰まっている感覚になりました。

 ポッドキャストを始める前は、平野啓一郎さんが提唱している「分人主義」のように、人によって接するときの自分のキャラクターが違うところが悩みだったんです。それが、この8年間で「ゆとたわ」での活動を仕事先の人や友人にも公言して、ポッドキャストでいろんな面を見せることによって、人格が統一されていくような感覚になって。書籍はそんな“本当の自分”を知っていく過程が込められたものになったんじゃないかな。

ほのか:私は「ゆとたわ」で話していなかったら思い出さないままだった感情が、ポッドキャストや書籍を通して蓄積されることで思い返せる機会を残せて嬉しいな、と感じたかな。というのも、私、本当に忘れっぽくて。

かりん:「ゆとたわ」でもいつも話しているよね。

ほのか:うん。そのときは「絶対に忘れないぞ」と思っている喜びや悲しみも、1年くらい経ったら忘れちゃうんです。出来事は覚えていても、感情は忘れてしまう。それが、書籍制作にあたって過去回や原稿をチェックする中で、当時の感覚が蘇ってきて……。「ゆとたわ」で話したことが蓄積されたおかげです。

かりん:この2人だからこそ引き出される部分もかなり多いよね。「ゆとたわ」で話す中でお互いに触発されて、想定していなかった地点に到達できる瞬間があるんです。雑談を続けてきてよかった!

「ワクワク」が継続につながる

――「ゆとたわ」では音楽や漫才、イベントなどさまざまな挑戦も続けていますよね。挑戦をしたくとも、成功への確信がないと動けない層も一定数いると感じているのですが、そんな人たちにどんな言葉をかけたいですか?

ほのか:……でも、思う通りにいかないことの方が多いもんね。

かりん:うん。私は「成功しなきゃ」という気持ちから始めたことは続けづらいと思っていて。目標を持つことも素敵だけど、私の場合は途中で辛くなる。だからこそ「過程」を楽しむことを大切にしています。

 それこそポッドキャストも、成功を見据えていなかったからこそ続けられたところがあると思っています。始めてからも視聴者数やランキングはあまり気にせず、ソーサーとの交流や送ってくれる感想に喜びを感じていて。これからも「リスナーを増やしたい」「ビッグになりたい」といった想いはなく、「まずは続けてみる」が目標です。

ほのか:なかには「目標があるほうが燃える!」「頑張れる!」という人もいるかもしれないけど……。でも私たちの場合は、目標を設けると現状と比較して、足りていない差分を見ながらずっと活動することになると思っていて。

 仕事のときにはKPIなど目標を設定せざるを得ないじゃないですか。でも個人で取り組むときには、差分を見るのではなく、一つひとつ楽しみながら新しいことを積み重ねていく方がワクワクする。そのマインドで続けています。 

目標はポッドキャスト版「徹子の部屋」?

――9月23日に第3回目が開催されるソーサーとの交流イベント「ゆとフェス」をはじめ、ソーサーともお互いの変化を共有し合いながら共に生きていく姿がとても素敵だと感じます。

ほのか:ありがとうございます。始めたばかりの頃は、芸人さんのラジオが好きなのもあって、いわゆるエピソードトークをしようとしていたんです。ですが、それを意識して出かけたりすると逆に面白いことが浮かばないことに気がついて。ここ3年くらいは、意識をしすぎないように日常を送るようになりました。その中で感じたことを共有しあって今があります。

かりん:日常で感じた小さな疑問や変化のほうが盛り上がったりするよね。ただ、やっぱり忙しかったりすると、いざ収録するとなったときにその1週間何も考えないで過ごしたことが明らかになって少しショックを受けることもあったり(笑)。

ほのか:ね(笑)。でも、もしポッドキャストをやっていなかったら仕事や目の前のことでいっぱいいっぱいの毎日を送っていたと思う。週に1回、ポッドキャストの収録を挟むことで、「今週の私はこういうことを感じていたんだ」と自分の感覚に戻ることができるんです。

かりん:お互いのライフスタイルの変化などもあると思うけど、続けていれば、どこかのタイミングで偶然ゆとたわに触れた人が、過去回も含めた私たちの会話の何かに共鳴してくれるかもしれない。そうしていつかは「徹子の部屋」みたいに、ポッドキャスト長寿番組としてギネスを取ってみたい。そんな未来を想像するのも、ワクワクしますよね。

インタビューを音声でも!

 好書好日編集部がお送りするポッドキャスト「本好きの昼休み」で、「ゆとたわ」の2人のインタビューを9月25日以降、順次配信予定です。お楽しみに!