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「史上最強のサッカー日本代表をつくるために僕はベルギーへ渡った」立石敬之さんインタビュー 持たざる者の発想の転換

立石敬之さん

 サッカーの本場欧州で、日本企業が経営するクラブが好調だ。著者がCEO(最高経営責任者)を務めるベルギー1部のシントトロイデン。日本選手が多く在籍し、22日時点でリーグ2位につける。人口4万人の地方都市にあるクラブが、欧州チャンピオンズリーグ出場という大きな目標に近づいている。

 シントトロイデンは、6月に開幕するワールドカップ(W杯)に挑む日本代表の「経由地」として知られる。代表主将の遠藤航(リバプール)、冨安健洋(アヤックス)、鈴木彩艶(ざいおん)(パルマ)らが欧州挑戦の足がかりとして加入し、成長の礎を築いた。

 2017年、ネット関連会社DMM.comがクラブを買収。その後、CEOに就いた著者は「日本人が欧州に学ぶのではなく、戦える時代にきたことを証明したかった」。

 約8年間、クラブのかじ取りを担う。最初はベルギーで「よそ者」とみられ、現地メディアの批判を浴びた。それでも100社を超える日本企業をスポンサーにつけ、日本から獲得した選手を成長させて得た移籍金でクラブを回す手法を確立。売り上げ規模がリーグ最低レベルだったクラブを成長させた。他クラブがやり方をまね、ベルギーで「日本選手ブーム」が起きるまでになった。

 資金が潤沢ではない大分トリニータで強化責任者を務めた経験から、「ゲームチェンジャー」の視点を重視する。「欧州と同じ土俵で戦うのではなく、マーケットの傾向を変えていくのが大事」。持たざるものゆえの発想の転換は、スポーツに限らず、ビジネスの場でも応用できるだろう。

 10人近いシントトロイデン出身選手がW杯に出る可能性があることについて聞くと、「逆に、責任を感じるんですよ」とぽつりという。「僕が関わった選手が現状に甘んじていてはダメ。もっと強い選手を育てないといけない」。欧州のビッグクラブで主力を張る選手はまだ出ていない。指導者や経営の部門でも、世界で戦える人材を育てたい。ベルギーと日本を往復する日々を送る56歳の夢は大きい。(文・照屋健 写真・塩谷耕吾)=朝日新聞2026年2月28日掲載