マリオ・ヴァッターニさん「日出ずる国へ イタリア外交官の日伊交流再発見の旅」インタビュー 夢とリアルがまざる視点
原題は「La Via del Sol Levante」。2017年にイタリアで出版した本が、日本語訳で刊行された。
昭和、幕末、16世紀の天正遣欧少年使節にまでさかのぼりながら、日本とイタリアの交流の歴史を丹念につづる。記者が「イタリアでこの本が読まれているのがうれしい」と伝えると、「私はこの本が日本で出版されたことがとてもうれしい」。流暢(りゅうちょう)な日本語でこの日の取材に答えた。
単に史実をなぞるのではなく、自身が日本国内を旅しながら見聞きした情景が、この本の背骨となっている。
旅をしたのは2004年。その前年にEU(欧州連合)の研修プログラムで来日し、1年間日本語と日本経済を学んだ。まとまった休みを使って、バイクにまたがり2週間の一人旅へ。福島県会津若松市の白虎隊終焉(しゅうえん)の地で見つけたローマ市寄贈の記念碑、イタリア海兵が眠る神戸の外国人墓地、そして京都・龍安寺の石庭を前に見えてきたもの。本を書くための旅ではなかったが、旅を通じた発見を伝えたいと文章にまとめた。
「書きながら、だんだんと旅の意味がわかりました。私の旅だけではなく、日本とイタリアの2国の旅の話になったと思います」と振り返る。
歴史上の出来事の描写にもあえて現在形を使い、時には旅する著者自身の視点とも交じりあう。「お能のように、あの世とこの世の間にある世界、そういう気持ちを表現したかった。夕暮れ時に白虎隊の墓の前で、あるいは神戸でバイクを加速させながら、私が見たものはリアルだったのか夢だったのか。日本の文化には、そう思わせる性質があると感じます」
昨年の大阪・関西万博では、迫力ある芸術作品の展示で話題を呼んだイタリア館の政府代表を務めた。そして今年2月、駐日大使に就任。日本におけるイタリアの顔として、任に励んでいる。
「イタリアも日本も大きく変化していますが、ずっと昔から互いに興味、友好、好奇心を抱いてきた。それがベースにあるというのは、大事なことだと思います」 (文・松本紗知 写真・谷本結利)=朝日新聞2026年5月23日掲載