吉田寛さん「東京大学で教わるゲーム学入門」インタビュー 遊びを通して人間を研究
「東京大学ゲーム研究室」と紙が貼られたドアを開けると、本が並ぶ中、「ファミリーコンピュータ」など懐かしいゲーム機が。ゲームでプレーヤーはどんな世界をどう経験するのか、が研究テーマだ。「ゲームを知ることは人間を知ることです」と語る。
「スペースインベーダー」「テトリス」「ドラゴンクエスト」「ポケモンGO」……。本書では12の有名ゲームを取り上げ、その発想や技術、文化や社会に与えた影響などを考察する。
例えば「パックマン」。4匹のモンスターはそれぞれのアルゴリズムで行動し、「ゲームAI(人工知能)の原点」と高く評価されている。世界が初めて出会ったメイド・イン・ジャパンのゲームキャラクターでもあった。
例えば「ゼビウス」。緻密(ちみつ)な世界設定でゲームを物語にし、ゲーム批評やゲーム音楽の文化もここから誕生した。
「ゲームというレンズを通すことで、日本の社会全体の動向が見えてくる。現代のデジタルゲームには、人間の感性を理解するための様々な手がかりが詰まっています」
専門は美学芸術学。もともと音楽を研究し、『絶対音楽の美学と分裂する〈ドイツ〉』で2015年にサントリー学芸賞を受賞。ライフワークとする人間の「想像力」と「自由」を探究する中、ゲームが格好の研究対象だと気づいた。
1973年生まれで、小学生の時にファミコンが登場。夢中で遊んだ。ゲームの発展とともに育った体験と、工学、情報学、社会学、心理学など最新の知見を総動員し、学際的なゲーム研究を続ける。
感性を考えるために注目してきたのが「スクロール技術」。背景を動かすことで空間や運動の感覚が生まれる。その最高傑作が「スーパーマリオブラザーズ」だ。誰にでも分かりやすいルールで、すぐゲームの世界にとけ込み、遊べる。「遊びが人間の本質という思想があります。遊びとは、ゲームとは。研究を通して人間を理解していきたい」
そのためにも自身がプレーヤーである必要がある。「毎日やりたいけど、時間が……」。悩ましいテーマだ。(文・石平道典 写真・岡原功祐)=朝日新聞2026年5月30日掲載