1. HOME
  2. インタビュー
  3. 著者に会いたい
  4. 上大岡トメさん「推し!はお遍路」インタビュー 誘われたらやってみよう

上大岡トメさん「推し!はお遍路」インタビュー 誘われたらやってみよう

上大岡トメさん

 還暦を控え、仲間に誘われ気乗りしないまま始めたお遍路に「まんまと」ハマった。

 四国八十八カ所の札所を何回かに分けて巡る「区切り打ち」で。それも気候のいい春と秋に。移動は徒歩と車、ロープウェーを組み合わせる。地元の食やお酒、温泉も楽しむ。そんな旅をつづったコミックエッセーは、遍路のハードルをぐんと下げる。

 旅の序盤、「へんろころがし」と呼ばれる険しい山道を4時間半かけて踏破。歩く楽しさを知り、普段から時間を見つけて近所を歩くように。

 手段も目的もさまざまなお遍路さんに出会った。車で巡る際に引け目も感じたが、「手段がなんであれ道のりも楽しもう」と心を決める。札所の住職から、動機は聞かないという不文律とともに、上下関係はないとも教わる。

 体感し、学び、じわじわ「推し」へ。コミカルな描写のなかに数々の気づきが盛り込まれ、人生訓のように心にしみる。「お遍路で得たことは日常でも生かせる。それがお遍路の面白さ」と話す。

 ベストセラー『キッパリ! たった5分間で自分を変える方法』を出した翌2005年、縁起のいいものを探し求める「ふくもの隊」を仕事仲間と結成。神社や宿坊を訪ね、本にしてきた。結成以来、徳島県出身のメンバーが言い続けたのが「60歳になったらお遍路に」。メンバーとともにつくった本書は、雑誌の連載をもとに書き下ろしも加えた。

 旅を終え、強く思うのは「誘われたら一度はやってみよう」。遍路に限らない。「年を重ねると新しく始める機会がなくなっていく。やってみれば面白いんですよ」

 50代後半で両親の介護が相次ぎ、自身もメニエール病に。老いを受け止め60代を迎え、「人の目を気にするなど、必要のないことはもうしない。自分の好きなことをしようと、やっと思えるようになりました」。

 昨年末、知人の勧めるイタリア・フィレンツェに1カ月滞在した。初の海外一人旅。出会いにも恵まれ、「推し」が増えた。アプリで毎日イタリア語の勉強を続けている。 (文・田中陽子 写真・山本倫子)=朝日新聞2026年5月16日掲載