ISBN: 9784065300725
発売⽇: 2026/02/12
サイズ: 13×18.8cm/208p
ISBN: 9784309032276
発売⽇: 2025/12/11
サイズ: 13×18cm/272p
「音でデザインする」 [著]小久保隆/「いのちの建築」 [著]手塚貴晴・手塚由比
緊急地震速報音や電子決済音など、様々な「音によるサイン」をいかに創作するか。『音でデザインする』は、ボツ作も含む豊富な音響例をQRコードで示しながら、作者自らその極意を綴(つづ)る。
聴き手が否応(いやおう)なく聴かされる公共音だからこそ、その意味合いや使命を十分に理解した上で作らなければならない。そこが、自由に表現できるアーティストとデザイナーとの違いだと著者は言う。「アートは無責任、デザインは有責任」
しかし、「アーティスト」もとい、その卵たちにこそ本書をぜひ一読願いたい。日常の喧騒(けんそう)のなかでも際立つ、緊急性を伝える音響を作るのにはデジタルの「スムースな音質」を避け、「荒削り」なアナログシンセの音を使う。会社のブランドイメージに沿う決済音や、馬券を買う人の不安感を払拭(ふっしょく)するような自動発売機の音色選び。季節ごとに変化する自然音を電話の呼び出し音の拍節にとりこんだ「メロディコール」。場により、あえて作り出す「雑音」の効用など、人と環境を「良好に結ぶ」ための小久保さんの発想や職人的こだわりは、大学の作曲科の授業では軽視されがちな意識――誰のためにどう作るのか――を喚起し、根本的な創作ヒントを与えてくれるはずだ。
『いのちの建築』によれば、建築学科の授業も同様で、学生の建築コンセプトは「必ず『私は~したい』という説明から始まる」という(作曲科も然〈しか〉り)。が、本来、建築設計(デザイン)は自分のためにするものでも、芸術でもないと著者は言う。建築はそれなくしては生きられぬ人間の「営みの全ての基礎」であり、使う人や社会に「何を引き起こすかということが大切」なのだ。
手塚夫妻の信念に則(のっと)った施工事例の数々は、自(おの)ずと教育、経済、自然など、そこでの人の営為とそれをとりまく環境との関係につながる。「結び目」としてのデザインの本質と「美」との関係について考えさせられる。
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こくぼ・たかし 環境音楽家、音環境デザイナー▽てづか・たかはる、てづか・ゆい 共に建築家。