1. HOME
  2. インタビュー
  3. 伏尾美紀さん「百年の時効」に吉川英治文学新人賞 時代またぎ追う真相「情熱だけは負けないように」

伏尾美紀さん「百年の時効」に吉川英治文学新人賞 時代またぎ追う真相「情熱だけは負けないように」

吉川英治文学新人賞の受賞が決まり、会見で話す伏尾美紀さん

 第47回吉川英治文学新人賞が伏尾美紀さんの「百年の時効」(幻冬舎)に決まった。大藪春彦賞も受けた同作について、伏尾さんは会見で「情熱だけは負けないようにしようという思いで書き上げた」と語った。

 1974年に起きた一家殺傷事件を、昭和、平成、令和の刑事たちが捜査をつなぎ、真実を追い求める物語だ。選考委員の大沢在昌さんは「3億円事件やサリン事件など、現実に起きた事件と架空の事件の捜査が有機的に絡まって、その時代の空気をほうふつとさせる。日本の推理小説史に残る警察小説であると同時に、警察史小説だという風にも評価している」とたたえた。

 伏尾さんは、江戸川乱歩賞を受け、「北緯43度のコールドケース」で2021年にデビューした。乱歩賞の選考委員から「この人は小説を書くのは下手だが、物語には光るものがある。小説を書く技巧は学んでいけば、まだ伸びしろがある」と評されたという。「50を過ぎた人間を伸びしろがあるからと採用する会社はないだろうが、作家の世界は可能性を見て、拾い上げてくれるんだと希望が持てた」。作家として、歩み出した。

 今作は、三つの時代をまたぐため、出版社からは長さは気にせずに書いていいと言われた。「まだ3冊しか実績のない作家」にこれだけの分量を任せてくれた。「期待に応えなくては」と思ったという。

 作品を書き上げて満足感を得たが、次第に客観的な評価も気になり始めた。そんな中、大藪春彦賞で評価されたことはうれしかった。だが、さらに吉川英治文学新人賞に決まると、「果たして今の実力が、この二つの賞を取るに値するのか。これから大変だなという思いが今は強い」。

 今作は、現時点で作家としてのターニングポイントではあるが、単なる通過点にしていきたいという。「これを上回る作品を書かないといけないというのを自分の中でプレッシャーとして、日々小説を書く上での糧にしていきたい」と意気込んだ。(堀越理菜)=朝日新聞2026年3月18日掲載