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ヒカシュー巻上公一さん第3詩集「眼差から帰還する」 シュールで、ときに社会的「妄想は無限大」

巻上公一さん

 実験精神あふれるバンド「ヒカシュー」を率いる巻上公一さんが、第3詩集「眼差(まなざし)から帰還する」(左右社)を昨年、発表した。シュールで、ときに社会的で、みずみずしい言葉の連なりが、読み手を異世界へといざなう。

 自らの肩書に「詩人」を加えたのは、第1詩集で第1回大岡信賞を受賞してから。だが、これまで歌詞として発表してきた作品も「最初から詩のつもりで書いていた」。

 中学生の頃に「寺山修司少女詩集」を読み、「こんな風に虚構の世界で遊べるんだ」と影響を受けた。高校では新聞部に所属する傍ら、文芸部誌の巻頭詩を担当。西脇順三郎や瀧口修造らシュールレアリスムの詩人にもひかれた。

 「いちばん好きなのは白石かずこさん。言葉に力があって、あれほど朗読パフォーマンスが音楽とマッチした人はいない」

 文字で読まれる詩。そこにバンドメンバーが曲をつけた新譜「ニテヒナルトキ 念力の領域」。そしてライブでの歌唱。それぞれに異なる色彩で言葉が迫ってくる。「自分の詩の世界、どっかに浮いていてもいいけれど、読み手や聴き手にときどき刺さってほしい」

 社会への違和感も詩の源泉。

  洋服という鎧(よろい)とカバンという盾で/なにを守ってんだ という聞こえない罵倒があり/どうもこうも眼差から帰還する/丸焦げの眼差から帰還する/殺気めく眼差から帰還する 表題作から 

 たとえば収録作「王国の水脈」には、絵画や映像でモンティ・パイソンに影響を与えたハリー・スミスが顔を出し、「へんてこなる砂風」の土台には萩原朔太郎の世界がある。貪欲(どんよく)な知識欲と世界各地での多彩な活動が創作のエンジン。読み手の好奇心量に応じて味わいがさらに増す作品群だ。

 「詩を読む力、というものはあると思う。それは、わけのわからないものを受け入れる力。詩人のジョン・キーツが言うところの『negative capability』ですね」

 文学フリマに出店して短詩を売ったり、ウズベキスタンで開催予定の東洋音楽祭に出演を申し込んだり、好奇心と表現欲は底なし。

 「詩集が重なってくると、言葉がますます面白くなってくる。頭の中で言葉をいろいろ妄想していると、違う世界に行ける。妄想は無限大です」(藤崎昭子)=朝日新聞2026年325日掲載