須沢栞さん「大規模災害時の広域避難と居住の復興」インタビュー 膨大な支援記録たどる
大災害が起きると、被災地への支援と同時に、他自治体への「広域避難者」の支援が課題になる。「災害ごとに対応は異なるが、検討する基盤になれば」と9年近くかけた調査・研究をまとめて出版した。あえてタイトルを「住宅」ではなく「居住」の復興にした。「生活を営む空間全体」を考えたためだ。
1991年、新潟県生まれ。新潟大学工学部建設学科で建築計画を学んだ。最初はデザインに興味があったが、「生活している人の立場がわからないとニーズに応えられない」と、人や生活に着目するようになった。
本書の中核をなすのは、東日本大震災で被災して沿岸自治体から盛岡市に避難してきた人たちの居住動向だ。詳細に分析し、支援上の課題を指摘している。
新潟大大学院当時から、福島県や宮城県で仮設住宅や災害公営住宅の居住者について研究していた。東京大大学院の博士課程に進み、2017年6月、震災直後から盛岡市に来た広域避難者に「伴走」しているもりおか復興支援センターを訪ねた。その夜の酒宴で、職員から膨大な支援記録が蓄積されていることを知らされた。
個人が特定できない状態での閲覧は許されたが資料は持ち出せない。19年、盛岡に半年間住み、約1千世帯分の電子データ化されていない被災者台帳や訪問記録を根気よく読み、職員から話を聞いた。
ハード整備が終わった後も約7割が故郷に戻らないことや、盛岡にとどまった世帯は戻った世帯よりも、高齢や病気などで配慮が必要な人がいる割合が高いことなどの傾向がわかった。
書き上げた博士論文は注目され、書籍化の話が舞い込んだ。その2カ月後の24年1月、能登半島地震が起きた。現地に行き、新たな広域避難の形態や課題があることを盛り込むなどして、約8万字の論文を約13万字に加筆した。
「東日本大震災から15年の節目に刊行されるのは不思議な巡り合わせ。現場に携わる行政職員や支援団体の方々に読んでいただきたい(文・写真 東野真和)=朝日新聞2026年3月28日掲載