1. HOME
  2. コラム
  3. みる
  4. 長崎訓子「子どもたちによろしく」 映画を絵と文章で表現するには

長崎訓子「子どもたちによろしく」 映画を絵と文章で表現するには

長崎訓子さんは70年生まれ。同名コラムを児童文学の総合誌「飛ぶ教室」(光村図書)で連載中。図版は本書、映画「E.T.」のページから

 本書は、イラストレーターの長崎訓子(くにこ)さんが2003年から続けてきた、子どもが登場する映画を取り上げて、絵と文で綴(つづ)る連載を一冊にまとめたものである。

 毎回著者自らが選んだ映画について、絵を描くだけでなく、文を添えて、媒体を変えながらもずっと連載を続けてきたことに深く感嘆する。

 著者のキャリアと並走してきたであろう20年余りの試みから見えてくるのは、一つの創作物に対して――この場合は映画だが、絵と文の二つで表現することで、それぞれの役割の差が際立つ点である。

 印象的なシーンを一つだけ切り取ったり、あるいは複数の象徴的な場面をコラージュ的に構成したり、映画にあわせて描くモチーフは様々だが、映像の中にある視覚情報を、著者の目を通して、絵で表現している。

 対して文は、物語、その映画の時代性や文化的背景、役者論など、著者の知識を通して、個人的な思いと共に、解釈が展開される。

 かくして、絵と文は異なる役割を担いながら補完しあい、一つの表現となるのだが、卓越した絵の才能はもちろんのこと、文化的素養の豊かさに裏打ちされた長崎訓子さんだからこそ成し得ているようにも思える。

 思えば、子どもは、絵と文字を視覚的に捉えて等しく扱える存在。本書は、絵や文を分けて考えるようになってしまった大人たちからの“子どもたちによろしく”なのかもしれない。=朝日新聞2026年4月4日掲載