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南美希子さんオススメの3冊 「活字に親しむ習慣 話す言葉に深み」

南美希子さん

 自宅にはたくさんの本があり、いつも子どもに絵本の読み聞かせをしていました。建築家だった夫は廊下の両側に本棚を作ってしまうほどの本好きで、リビングにもインテリア兼書棚があり、置く場所には困りませんでした。ですから、子どもも本に囲まれた環境で育てたいと思っていました。

 息子が1歳の誕生日を迎える前に、友人から『いないいないばあ』という絵本をもらったのです。文字がほとんどないシンプルな作品です。子どもに読んであげると、けらけらと笑うのです。とても可愛らしくて、「もっと絵本を読んであげよう」と、そこから読み聞かせに没入していきました。

 毎週末、絵本を10冊以上買って帰るのが習慣になりました。子どもも夢中で、寝る前に10冊くらい枕元に運んでくるのです。それを読まないと寝ないので、毎晩のように読み聞かせをしていました。小学校受験の時に数えてみたら1万冊読んでいました。

 幼少期に本を通して文字や活字に親しむことは大変重要だと実感しています。彼の中にある基本的な論理的思考は読書で得たものだと思います。ふとしたときに、論理的なものの考え方やきちんとした文章の書き方ができていることに気づき、ホッとしています。

 私は子どもにデジタルデバイスを与えてきませんでしたが、今は赤ちゃんにスマホで動画を見せる親もいるそうです。子どもの頃に文字に親しめる環境を作ることが何よりも大切であることを、もう一度見直す必要があるのではないでしょうか。

 私はかつて、テレビ朝日アナウンサーとしてバラエティーや情報番組を担当し、独立後はコメンテーターの仕事も長く続けてきました。事故や事件についてコメントを求められれば、「痛ましい」とか「二度とこんなことが起きてはいけない」と言うだけではなく、その背景や他国での事例などを引き合いに出し、説得力のあるコメントをする必要があります。

 テレビに登場するコメンテーターや解説者、評論家の中には政治や経済、社会に関する込み入った内容を、整然と分かりやすく語れる人が多くて感心させられます。多くは大学教授だったり、新聞社の記者や出版社で働いていた人だったりします。いずれも文字に関わる仕事をしている人が多いように思います。

 記事を書いたり、本を出したり、「読む」「書く」が当たり前の人たちは「話す」ことが分かりやすく、深いのです。読むことによって知識を蓄え、書くことによって考えをまとめ、それを話し言葉として人に伝える。これはどんな分野の仕事でも必要ですし、若い人たちに求められる重要なスキルだと思います。

 若いときから文字・活字に親しむことで、その後の人生を豊かにし、より知的な生活を送れるようになるでしょう。多くの親が子どもには好き嫌いなく、何でも食べられるようにと育てますが、文字・活字も子どもの頃から慣れ親しんでいないと、大人になっていきなり本や新聞を読めと言っても難しいですよね。

 私も長く「話しのプロ」として仕事をしてきましたが、言うまでもなく、人は言葉によって通じ合います。キャリアや年齢を重ねるにつれて、会話の重要性はいっそう増してくるでしょう。「読み・書き・話す」をそれぞれ伸ばして一体化すれば、教養ある話し方が身につきますし、人間としてステップアップできると信じています。

南美希子さんお薦めの本

経済学者たちの日米開戦 秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く

牧野邦昭 新潮選書 1870円

 先の大戦の2年前、陸軍内部に設けられた経済謀略機関である「秋丸機関」。きら星のごとく集められた優秀な経済学者たちによる「正確な分析」が、なぜ開戦という「不合理な意思決定」につながってしまったのか。経済学の視点に立った冷静な分析ながら、すさまじい吸引力で読者を引き込む。

持続不可能な財政 再建のための選択肢

河村小百合/藤井亮二 講談社現代新書 1210円

 核心をついた切れの良い発言にいつも共感するエコノミスト・河村小百合さんが執筆。選挙が近づくと消費税減税、現金給付に所得税減税と、聞こえのよい経済政策が並ぶが、借金大国の我が国。財源の捻出はどうするのかという疑問にシビアに答え、破綻(はたん)を防ぐ方策を示した。

青い壺

有吉佐和子 文春文庫 847円

 半世紀前の小説でありながら2025年上半期文庫1位に輝いた本と聞いて読んだ。いやぁ面白い。一気呵成(かせい)に読み終えた。美しい青磁の壺を軸に13の小編が紡がれている。構成の見事さ、心理描写の巧みさ、鮮やかに蘇(よみがえ)る世相。小説の醍醐(だいご)味を存分に味わわせてくれる一冊だ。

南美希子さんからのメッセージ

 読書は世界や知識が広がるだけでなく、話術にも影響してきます。話に深みが出て、考えることによって系統立った話ができるようになるのです。もちろん、話題にも事欠きません。人気者はたいてい読書家です。そんな視点で選びました。

=朝日新聞2026年5月14日掲載