秘密基地に集まって遊んでいた小学生「超平和バスターズ」の6人。メンバーのひとりが死んでしまったことで、彼らは疎遠になってしまう。不登校を続ける高校生の仁太の前に、死んだはずの少女・芽衣子が現れる……。
埼玉・秩父を舞台にしたヒットアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」をはじめ、「心が叫びたがってるんだ。」など数多くの人気アニメの脚本で知られるシナリオライターの岡田麿里(まり)。『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(文芸春秋・1512円)は、そんな著者がみずからの半生をつづった自伝だ。
学校に通うための「キャラクター設定」をうまく作れず、中学校から高校まで5年半もの間、不登校を続けていたという著者。前半で語られるのは、一日一日を何も出来ずにただ「消日(しょうじつ)」するほかなかったその時代だ。風呂にも入れず、自傷行為に及び、さらに母親から包丁を向けられる焦燥と絶望の日々が、どこまでも赤裸々に描かれる。一方、そんな生活の中、谷崎潤一郎『痴人の愛』を読みふけっていたというエピソードなどからは、しばしばセクシュアルなモチーフを作中に登場させる脚本家・岡田麿里の原点が垣間見える気がする。
そんな著者だったが、専門学校に入ったことで同好の士を得て、Vシネマの世界から脚本家デビューする。「お金が安くてもいいです」「なんならエロも書けます」と手当たり次第に仕事をするうち、アニメと出会う。やがて彼女がオリジナルアニメを企画することとなった時に選んだのは、故郷の秩父を舞台に、自分と同じ登校拒否児を主人公にすることだった。
アニメの脚本を書くことを通じて、著者は登校拒否の過去と向き合い、自分でも知らなかった母親への思いに気づいていく。傑作と呼ばれる作品はどこから生まれてくるのか、どうして人は物語を書こうとするのか……その答えのひとつが本書にあると思う。
ひとりの作家の半生が、生の言葉で語られた本書には普遍的な青春小説としての魅力がある。著者のファンや、脚本家志望者はもちろんのこと、アニメに詳しくない人も是非、手にとってほしい。=朝日新聞2017年4月30日掲載
編集部一押し!
-
著者に会いたい 「史上最強のサッカー日本代表をつくるために僕はベルギーへ渡った」立石敬之さんインタビュー 持たざる者の発想の転換 朝日新聞文化部
-
-
インタビュー 絵本「ある星の汽車」森洋子さんインタビュー 同じ星に生まれた隣人たちの絶望的な不在を描く 大和田佳世
-
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
新作映画、もっと楽しむ 映画「木挽町のあだ討ち」渡辺謙さんインタビュー 分断と不寛容の時代「解決方法、この作品が見本になる」 根津香菜子
-
谷原書店 【谷原店長のオススメ】ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」 「虚構」を軸に人類史をとらえ直すと 谷原章介
-
オーサー・ビジット 教室編 伝わる読書感想文とは 共感や驚き、自分の体験に引きつけて 文芸評論家・三宅香帆さん@京都市立深草中学校 中津海麻子
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社
-
トピック 【プレゼント】第68回群像新人文学賞受賞! 綾木朱美さんのデビュー作「アザミ」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
トピック 【プレゼント】大迫力のアクション×国際謀略エンターテインメント! 砂川文次さん「ブレイクダウン」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
トピック 【プレゼント】柴崎友香さん話題作「帰れない探偵」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 今村翔吾さん×山崎怜奈さんのラジオ番組「言って聞かせて」 「DX格差」の松田雄馬さんと、AIと小説の未来を深掘り PR by 三省堂