2月に京都で「Diploma × KYOTO ’18」という、関西の22大学の建築系学生による卒業制作展の2日目に、審査員として参加した。
建築の卒業制作と聞いて、思い浮かべたのは単体の建物だったのだが、当日会場に並ぶ150以上もの作品を見てその多様さにとても驚いた。SFに出てくるような迷宮的都市もあれば、過疎化した地方の漁港を再生するプロジェクトもある。既存の町屋やマンションに互いに行き来できるよう梯子(はしご)や通路でつなぐ提案、天王寺駅の前の交差点に人々が集えるような歩道橋、廃墟(はいきょ)になっている遊園地に作る書の筆跡をイメージした博物館。実現可能性の高いものからフィクション的豊かさの多いものまで、「建築」はこんなにも発想が広がるものかと、見るのも、審査も、学生とのやりとりも楽しかった。
「地域のつながり」や「コミュニケーション」がテーマになっているのが目立ったのは、それが現代の社会が抱え続ける問題だからだろう。その課題に果敢に挑む若い人がこんなにもいることに、わたしはとてもわくわくした。当日の審査員長を務めた建築家の先生が、関西は都市の文化が成熟しているから町への信頼感が強いと言われていたのが心に残った。
それにしても、学生は、具体的な場所の歴史や課題を調査し、テーマをまとめ、設計し、さらに模型や資料を作って、プレゼンテーションまでするのだ。その上、このイベントは運営も学生がやっている。自分が大学生のころなんて、もっとぼんやりしていて、とてもこんなことはできなかったと、感心することばかりだった。
わたしへの連絡や送迎をずっと担当してくれた女子学生も、審査や打ち上げでやりたいことを語ってくれた学生たちも、ほとんどがこの4月からそれぞれの職場で仕事を始めている。厳しいこともしんどいこともあると思うが、自分の志したものを信じて、歩いていってほしい。=朝日新聞2018年4月16日掲載
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