1. HOME
  2. 書評
  3. 「青年の主張 まなざしのメディア史」書評 浮かび上がる戦後史の姿

「青年の主張 まなざしのメディア史」書評 浮かび上がる戦後史の姿

評者: 原武史 / 朝⽇新聞掲載:2017年04月02日
青年の主張 まなざしのメディア史 (河出ブックス) 著者:佐藤卓己 出版社:河出書房新社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784309625003
発売⽇: 2017/01/27
サイズ: 19cm/435p

青年の主張 まなざしのメディア史 [著]佐藤卓己

 60年安保闘争や学園紛争など、若年層が注目を集めた事件は少なくない。それらをつなげた戦後史の「語り」も依然として流布している。しかし、表層的な事件を追っているだけでは、戦後史の実像に迫ったことにならない。
 著者が注目したのは、戦後長らくNHKで毎年放映された「青年の主張」という番組である。なるほどそこに、学生運動のような派手さはない。だが若年層の多数を代表していたのが、異議申し立てをする学生よりも、この番組に出た「青年」の方だった時代は確かに存在した。彼らの経歴や演説の内容をつぶさに分析することで、これまでとは違う戦後史の姿が見事に浮かび上がってくるのだ。
 しかもこの番組は、「青年」を見つめる大人たちや全国大会に毎年出席する皇族のまなざしに規定されていた。昭和の終焉(しゅうえん)とともに「青年の主張」が「青春メッセージ」へと番組名を変えたことに「青年」の解体を見る著者の視点が鋭い。