「写真民俗学―東西の神々」書評 斬新でユーモラスで卑近な世界
評者: 宮田珠己
/ 朝⽇新聞掲載:2017年05月21日
写真民俗学 東西の神々
著者:芳賀日出男
出版社:KADOKAWA
ジャンル:芸術・アート
ISBN: 9784044002152
発売⽇: 2017/03/27
サイズ: 22cm/311p
写真民俗学―東西の神々 [著]芳賀日出男
日本と世界を渡り歩き、神と祭礼を撮り続けた写真家芳賀日出男。
彼の集大成ともいえるこの本には、400点以上に及ぶ世界の多様な習俗が収録されている。南洋の仮面や西欧の巨人、獅子踊りに火祭り、サンタクロースなど。その見た目の奇抜さ、面白さは、民俗学に興味のなかった者をも魅了する。
どこか遠くの知らない場所で行われている古臭い習俗を、芳賀は、斬新でユーモラスで卑近な世界として提示してみせたのだ。
平成になり珍風景やB級スポットが流行し、その多くが民俗学の領域と重なっていたことを思い出す。まるで世界の姿を無垢(むく)な目でとらえる芳賀のアプローチに準じたかのようだ。
そうして人を惹(ひ)きつけたうえで芳賀は語る。
なまはげは世界中にいる、と。
それは問いである。
多様性と類似性。この豊饒(ほうじょう)な世界をどう読む?
写真が、民俗学を要請するのだ。