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「吹奏楽の神様 屋比久勲を見つめて」書評 指導が生んだ奇跡の音色

評者: 斎藤美奈子 / 朝⽇新聞掲載:2017年10月29日
吹奏楽の神様屋比久勲を見つめて 叱らぬ先生の出会いと軌跡 著者:山崎 正彦 出版社:スタイルノート ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784799801635
発売⽇: 2017/09/21
サイズ: 19cm/190p

吹奏楽の神様 屋比久勲を見つめて―叱らぬ先生の出会いと軌跡 [著]山崎正彦

高名なジャズトランペッターが舞台上で中学生のドラマーを往復ビンタした、と報じられたのは2カ月ほど前。スポーツや音楽の場においてスパルタ教育が必要だという意見は今も根強い。が、その対極にある指導法があるとしたら?
 本書は沖縄の中学や鹿児島の高校の吹奏楽部を何度も全国大会金賞に導いた屋比久勲の5年間を追ったノンフィクションだ。
 屋比久の指導方針は叱らないこと。「その高音はまだ綺麗(きれい)じゃないね。先生も明日までに別の練習方法を考えてくるから、あなたも考えて」などの言葉で生徒たちに語りかける。
 沖縄で教師をしながら神戸に通って朝比奈隆に指揮を習った屋比久は、師の教え通りわかりやすい指導に徹し、叱るかわりに生徒たちに考えさせる。そこから生まれた奇跡の音色!
 3人でスタートした九州情報大学吹奏楽部は49名に増え、2年で全国大会銀賞に輝いた。部活のひとつの理想型を見た気がする。