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みたこともない笑いの果て

半分世界 (創元日本SF叢書) 著者:石川 宗生 出版社:東京創元社 ジャンル:小説・文学

価格:2052円
ISBN: 9784488018252
発売⽇: 2018/01/21
サイズ: 20cm/307p

ある朝突然、縦に半分になった家で、平然と暮らし続ける一家とその観察に没頭する人々を描く表題作をはじめ、会社から帰宅途中の吉田大輔氏が一瞬にして19329人となる「吉田同名…

評者:円城塔 / 朝⽇新聞掲載:2018年03月18日

半分世界 [著]石川宗生

 筆力に驚かされる。
 デビュー作とは思えない整った文章や、思い込みを突いてくる比喩。それも印象的なのだが、なによりもバランス感覚である。
 たとえば、町がたくさんの同一人物たちに埋め尽くされる「吉田同名」。あるいは縦割りにされて中の見える家に暮らす一家を描く表題作。
 会話の中でふと浮かんだようなホラ話といった主題であるが、作者はそれを生真面目に淡々と展開していく。純粋な嘘(うそ)からはじめる話は難しい。馬鹿馬鹿しさの程度をこえるとすぐにそっぽを向かれてしまう。それを大通りを歩くように悠然とすすめる。
 一般に、ホラ話はホラ話として幕を降ろす。この短編集で特徴的なのは、ホラ話たちは成長を続けるうちに自らの殻を食い破り、その向こう側へ突き抜けてしまうところである。
 下手な教訓や、お涙頂戴(ちょうだい)ではなくて、そこには、これまでみたこともなかった笑いの果ての風景が広がっている。