我らコンタクティ [作]森田るい
町工場で宇宙ロケットを作って打ち上げようと奮闘する、1巻完結のドラマ。
読み終えて胸が熱くなった。といっても、「下町の工場が技術力で世界へ打って出る」みたいな、よく聞くサクセスストーリーとは趣が違う。なにしろ、この物語の主人公たちの目的は「むかし遭遇したUFOの宇宙人に、お気に入りの映画を見せたい」という奇妙なものなのだ。
映写機とフィルムとスクリーンを自分たちで打ち上げ、宇宙で映写しようという無茶(むちゃ)な展開がコメディー調で進む。が、酔狂な話かと思っていると、人の心の奥に揺さぶりをかけるような、緻密(ちみつ)なドラマが展開され、ぐいぐいと物語に引き込まれる。気がついたら主人公たちにすっかり共感し、手に汗握っているのだった。著者初の単行本とのことだが、ニュアンス豊かな絵や表現も、一人一人際立ったキャラクター造形も、すべてが新人ばなれしていて、みごとというほかない。
本当に輝かしい何かに出会い、心奪われるような経験。そして、それを誰かと分かち合えているという手応え。すり切れた日常の中で忘れかけていた、そんな遠い記憶が呼び覚まされるような、ロマンティックな一冊だ。=朝日新聞2018年1月7日掲載