メディアに身を置いて半世紀。1985年から18年半続いたテレビ朝日「ニュースステーション」(Nステ)や、TBS「ザ・ベストテン」など、自身がかかわった人気番組の裏話をつづった。
一貫しているのは、「誰もやっていないことをする」というこだわりだ。バラエティーの司会者として人気絶頂時に、ほとんどの番組を降板し報道番組の顔に転身。Nステでは長嶋茂雄さんから終戦直後の思い出話を引き出し、「ザ・ベストテン」では「リアル」を伝えるべくテレビに出演しない歌手もランキングに反映させた。お茶の間が親しみやすい柔らかな語り口調や、最新ファッションを取り入れた先駆者でもある。
学生時代、ひやかしで受けたTBSのアナウンサー試験に合格したことが、この世界に入るきっかけ。フロンティア精神は「アナウンサーになりたくてなったわけじゃないということが大きく影響した」と語る。「元々アナ志望だったら、特色のないアナウンサーになっていた」との自己分析だ。
権力チェックこそがメディアの役割だとの信念があり、「どんな政権であろうが、それにおもねるメディアは消えていくべきだ」と記した。Nステでは政治家に厳しいコメントを投げかけ、度々圧力を受けたという。86年のダブル選で中曽根康弘首相(当時)の選挙事務所から閉め出されたが、独りぼっちの屋外での中継を振り返り「おいしい映像で、テレビ的には最高。どの番組にも勝ったと思った。『中曽根さん、ありがとう!』ですよ」。小刻みに息を吸い込みながら、いたずらっぽく笑う。
本にしたのは幅広い人の仕事の参考になればとの思いからだ。「僕のように、たまたま就いた仕事でも、一生懸命やれば多少の答えは出るんじゃないかという趣旨」と説明する。半生の記録であり、人生の総括の意味合いもあるのでは? と聞くと「それは確かに……。昨年、親しかった永六輔さん、大橋巨泉さんが亡くなった。影響がないといえばうそになる」と答えた。“終活”の準備宣言にも聞こえ、ドキリとした。
(文・後藤洋平 写真・西田裕樹)=朝日新聞2017年10月8日掲載
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